ガンダムが40周年だそうだ。
私はリアルタイムで見ていて、アニメーターにもなりたかったけれど、
その後に、本家というか元ネタのスター・ウォーズを好きになり、
アニメ自体も卒業してしまった。
ガンダムもスター・ウォーズも、作品そのものが好きだったというよりは、
作品に込めた願いや伝えたい意図のようなものに、私は魅かれていたのだと思う。
どちらも若者の成長の物語でもあって、
ルークは、すんでのところでダークサイドに落ちてしまいそうになるし、
アムロにいたっては、ひ弱で内気で暗い。
二人はヒーローらしくないのだけれど、成長していく姿がリアルヒーローだ。
さて、日本の昔話にも、一見頼りなさそうな若者の話がいっぱいある。
ドイツ文学者で、日本の昔話の研究者、小澤俊夫さん
(ミュージシャンの小沢健二さんの父上)によると、
日本の昔話が道徳的で教育的なものに改ざんされてしまったのは明治からで、
それ以前の昔話は、今とは違うものだったという。
たとえば、あの桃太郎。
小沢さんの著書、「ろばの子 昔話からのメッセージ」には、
オリジナルの桃太郎が収録されているのだが、
桃太郎はチャランポランな子で、鬼が島に鬼退治にも行っていない。
小沢俊夫さんによると、
若者が主人公の昔話で、若者の描かれ方といったら、
「いつも眠くてグータラで、ボーッとしている」のだとか。
でも、それが若者というものなんだから、と、
昔の人はお話を語り継ぐことで、若者を見守ってきた。
そして、さなぎが蝶に変容するように、
昔話には若者が成長していく姿が描かれる。
若者は変化の象徴でもあるのだ。
一方、若者との対比として描かれるのは爺さんや婆さんで、
たとえば、こぶとり爺さん。
良い爺はずーっと良い爺のままで、
悪い爺はずーっと悪い爺のままだ。
キャラクターが一切変わることなく物語は終わる。
頑固で、もう変わっていかない存在として描かれているのだ。
そういうものなんだから、と、
いわば昔話は「語り継ぐ知恵」だったのだろう。
さて、この本「ろばの子 昔話からのメッセージ」には、
桃太郎の他にも、シンデレラや白雪姫、わらしべ長者など、
有名な話の原典が収録されている。
それぞれの話に小沢さんによる解説が添えられているのだが、
「三度くりかえし法則」の解説が興味深い。
どの話にも共通して、同じようなエピソードが三度くり返されるのは、
成長したくても成長するのが怖い、
振り子のように揺れ動く若者の気持ちを表しているというのだ。
そんな若者たちに、一見マイナスに思えることが起きたり、
様々な出会いがあったりして、いつしか変わっていく。
しかし、大人になると、
そんな「もどかしさ」が自分にあったことなんか忘れてしまう。
昔話は、昔の自分もそうだったことを想い出させる装置でもあるのだ。
(タイトルにもあるグリム童話の「ろばの子」を読んでボロ泣きしたとです)
・「ろばの子 昔話からのメッセージ」
小沢俊夫・著
小沢昔ばなし研究所・刊