月別アーカイブ: 2015年11月

アイメイト協会機関誌「アイメイト」47号に載せていただきました

アイメイト協会が発行している機関誌「アイメイト」47号の、
「リレーインタビュー」コーナーの取材を受けました。
記事全文を転載させていただきます。

この機関誌「アイメイト」は、
サポート企業さん、団体さん、会員さんに
年一回届けられる冊子です。
援助していただきましたサポートの皆様、
サンダーに大きな寄付をくださいました高野山真言宗様、
サンダーを育ててくださいました
繁殖ボランティアのご家族様、
飼育ボランティアのご家族様、
あらためてお礼を申し上げます。
この機会をいただいてサポートの皆さんに、
サンダーと暮らす日常をご報告できて感謝しています。

***転載ここから

〈リレーインタビュー 第9回〉
『アイメイトをもってアクティブな自分を取り戻した』
高橋智子さん(47歳)とサンダー
名古屋市在住

「心理カウンセラーを目指して行動開始」
デザインや校正の仕事を経て、掛軸の表具師として働いていた30歳の時、
目が見えづらくなり、病院で網膜色素変性症と診断されました。
43歳の頃にほとんど見えなくなってからは、外出は家族や友人と一緒、
白杖が嫌で使わなかったため、家にこもりがちになりました。
アウトドアが大好きで、キャンプ、登山、スキューバダイビング、車の運転などを楽しんだりしていましたので、自由に歩けなくなったことはとても辛かったです。
目の治療で気功やヒーリングを体験する中で「心の大切さ」を痛感しました。
目は見えなくても、聴くこと、話すことで
人の幸せや成長を手助けできるならばと心理カウンセラーを目指すことを決意。
同じ頃、あるセミナーでアイメイト使用者の方と出会い、お話をして
「盲導犬との歩行では人が主体となる」
というアイメイト協会のポリシーに強く共感しました。
2012年4月に両親と岐阜県の郊外から名古屋市へ転居し、
一週間後に協会で面接を受けアイメイト使用の申込みをしました。
5月からカウンセラーの専門学校に通い、アイメイトをもつまでの間は白杖で通学。
行きは母に校門まで送ってもらい、
帰りは同級生と最寄り駅まで一緒に歩き、そこから自宅の駅までは一人で帰り、
母が改札まで迎えに来てくれるという状態でした。
12月に念願の歩行指導を受け一頭目のアイメイト、サンダーとペアになりました。
サンダーは始め歩行指導員のほうばかり気にしていましたが、
時を重ねるうちに私を主人として認め、
コミュニケーションが上手く取れるようになりました。
同クラスの誰よりも失敗が多かったぶん、
問題修正の方法も多く学べたことが卒業後に役立ちました。
アイメイトへの愛情は甘やかすことではない、
という教えも深く心に刻まれています。
卒業の日は、家に帰れる嬉しさと
サンダーと二人でちゃんと帰れるだろうかという不安が半々、
でも東京駅の雑踏の中、行き交う人に声を掛けて道を聞いたり、
新幹線ホームまで駅員さんの肩に触れることなく、
誘導の言葉を聞いてサンダーに指示を出し、歩くことができました。
最初の一年は慣れないことで困ったことも多かったのですが、
一つひとつ解決し今は問題なく歩行しています。

「心の安定を得て身体も健康に」
アイメイトと一緒にいることで心が安定し、たくさん歩くので身体も健康になり、
本来のアクティブな自分を取り戻せたことがなにより嬉しいです。
2013年1月からリハビリセンターで
視覚障害者向けのパソコン操作や点字を習い、調理訓練なども受講しました。
そして5月には認定心理カウンセラー、11月には認定心理療法士の
試験にパスし、資格を取得しました。
2014年8月から自宅でカウンセリングルーム HUM HUM(フムフム)を開設し、
HP、面接、電話、インターネット電話などで、
心理カウンセリングと心理療法を提供しています。
心がけているのは、自分の考えを押し付けず、先入観を持たず、
その人のよくなる力を信じて、真摯にお話を聴くこと。
相談者の方が漠然とした思いを整理したり、
気づきを得て、より自分らしく、
楽に毎日を送ることができるようサポートができたらと思っています。
活動を認知していただくため、自分のカウンセリングスタイルや
アイメイト使用者であることなどをHPとブログで紹介しています。
カウンセラーにとって、自分の身体とメンタルを整えておくことは
大切な準備であり、歩くことは大きな助けになります。
 毎日近くの公園を散歩して
花の匂いや風を感じ、季節ごとの自然を満喫しています。
買い物にもでかけるので、ご近所に声なじみが増え、人間関係が広がりました。
勉強のセミナーに参加するため、たまに街中へ出かけます。
名古屋では親切を受けることが多く、
盲導犬使用者に対するマナーもとても良いです。

「アイメイトは私の目、仲間、友達、家族であり、なくてはならない存在です」
ハーネスを外したら部屋でのんびりくつろぎの時間。
外でいつも一緒なのに、家でも私の後をついて歩きたがります。
同居している母も犬好きですが、アイメイトの役割を理解し、
距離を置いて見守ってくれています。
 サンダーと北海道、博多、神戸、大阪、軽井沢などへ旅行し、
船にも飛行機にも乗りました。
これからも友人とキャンプに行ったり、いろいろな所へ出かけたいです。
またカウンセリングの仕事を含めもっと社会に参加し、
視覚障害者が「普通に暮らしている」ことを
広く知ってもらうために貢献していけたらと思っています。(談)

*カウンセリングルーム・フムフム

http://hum-hum.jp/

次回はどなたが登場するでしょうか おたのしみに

出典:アイメイト協会発行の機関誌「アイメイト」47号

***転載おわり

Dave’s Killer Bread

米ポートランドのデイヴズ・キラー・ブレッドの話。
「デイブのすんごいパン」という名のこのパンは、手にするとずっしりと重い。
ひまわりの種、亜麻仁など、なんと21種類の雑穀が入っているのだとか。
入っているというよりは詰まっているというのか、とにかく噛みごたえが凄い。
そしてなんといっても美味しい。美味しくて体にいい。
当然、グルメでヘルシーな街ポートランドでは人気のパン。
ポートランドから帰ってきた友人からお土産にいただいて、
すっかり大好きになったデイヴズ・キラー・ブレッドですが、
このパンが生まれたストーリーも、またいい。

刑務所から出所したデイヴさんは、
なかなか雇ってくれるところが見つかりませんでした。
(服役の理由はキラーではなく薬物だそうです)
ようやくパン屋さんが雇ってくれて働きます。
「おまえ、パンこさえるの上手いなあ」と親方に褒められるようになり、
デイヴさんはパン作りの才能を開花させたのでした。
やがて独立起業して、
いまやポートランドのホテルや高級スーパーに並ぶ
ポートランド名物パン屋さんになりました。

ロゴもかっこいい。(らしい)
デザインは、ギターピックの中に
ギターを抱えたおっさん(おそらく本人)のイラスト入り。
ああ、なにもかも「ツボ」なデイヴズ・キラー・ブレッドなのでした。

サンダーと体験学習にいってきました

*追記 
2017年よりプログラムを大幅に変えています。
この記事は、2015年度のプログラムです。

***
名古屋市中川区の小学校にお招きいただいて、
体験学習の授業をさせていただきました。

目の不自由な人の暮らしは?
アイメイト(盲導犬)って?
目の不自由な人をお手伝いするときは?
私が日常で使っているグッズの説明や、
アイメイトのサンダーと行動する実演をして、
生徒の皆さんには、誘導する体験・誘導される体験をしていただきました。

みんな熱心に聞いて体験してくれましたよ。
生徒さんたちの質問や感想を聴いて私は、
なんて頭も心もやわらかいのかしら!と
とてもうれしかったです。

言葉は意識にあげる鍵③ 

色はたくさんあってグラデーションがあるように、
味や香りは次から次へ移りかわっていくように、
感情や身体の感覚もたくさんあって移りかわっていくものです。

さて、「自分との対話」の話。
内なる子どもが見せてくれる感情や身体の感覚は、
モヤーっとしています。
ひとつひとつの見分けがついていないからです。
色を言葉の名づけによって見分けるように、
感情や感覚を言葉の名づけによって見分けます。
モヤーとした未分化な状態を「無意識な状態」といいます。
見分けられたものを「意識できている」といいます。

私がスタバの「ケニア」というブレンド豆のコーヒーを飲んだとき、
意識できたのは「苦い」くらいで、
他は分からなくてモヤモヤしていたところ、
「グレープフルーツみたいな風味」というぴったりな言葉の名づけによって、
「まさにそれ!」となりました。
身体が感じたことに、それを頭で意識できたことがぴったり。
この「まさにそれ!」のぴったりを「一致」といいます。

ちょっと難しかったですかね?
実は自分と対話する素地は、
意識した日常をおくることから作られます。
それは、自然の色を観察することや、
味覚を丁寧に味わうことが手助けになります。
素直にありのままに観察し
浮かんでくる言葉を次々出してみて、
まさにそれ!という感覚まで行きついてみる。
「一致」ってこれか!という感覚を体験してないと、
内なる子どもの本音が出たときのサインを見逃してしまいます。
なんと本音が分からないうえに、
取違えてねじ曲げてしまうなんてことも。

意識した日常なんて、忙しくてそんな時間ないよ。
それがですね、面白いことに
内なる子どもと対話がスムーズになると…。

(おわり)

味と香りと通じる言葉 言葉は意識にあげる鍵②

15年前に、スターバックスコーヒーのお店で開催されている、
テイスティングパーティーに参加した時のこと。
現在はわかりませんが、当時のスタバのテイスティングパーティーは、
利き酒ならぬ「利きコーヒー」の入門イベントでした。

「ケニア」と、「カフェ ベロナ」という、
スタバのオリジナルブレンド豆で淹れたコーヒーの飲み比べをした時です。
説明なしに飲んでみて私は、
ケニアは「ちょっと苦い」、
カフェベロナは「ケニアよりは苦い」くらいしか差が分からなかったです。

ケニアを評して、バリスタさんはこう言いました。
「これはグレープフルーツのような風味が特徴です。
…わー! ほんとだ!
とたんにグレープフルーツの風味がくっきりと分かりました。
そしてカフェベロナを評してこう言いました。
「こちらはカカオのような風味が特徴です。」
…おー!ほんとだ!
まさにカカオ、ダークココアっぽいではないですか!
グレープフルーツやカカオのフレイバー、香料が入っているわけでもないのに。
他に、煙・枯草・ベリー類・カラメル・花・ナッツなどの風味があること、
コーヒー豆は果実で、その産地の土壌や気候によって様々な風味があること。
しかもコーヒー器具で味がかわることも体験しました。
それまでコーヒーの味は「苦い」くらいしか分からなかった私でしたが、
このパーティーでアップデートしたのでした。 *自分比です

味覚と嗅覚に、「まさにそれ!」という
ぴったり一致した言葉がみつかったときの感動といったら忘れられないです。
もし私がコーヒー豆だったら、
やっと通じたよ!と嬉しかったことでしょう。
私は苦いだけではないのです。
他にも会話をしているのですから。

あ、こうやって味と対話するんだ。一致する言葉を介して。
そういえば、香合わせで全的中をした経験を持つ
私の長年の友人は、
味と香りと対話する言葉を豊富に持っています。

言葉をたくさん知っているに越したことはありませんが、
感覚に一致した言葉を使えるかはもっと大事です。

(続きます)

言葉は色を見分ける 言葉は意識にあげる鍵①

家の日常使いのタオルを新調しようと、
Amazonで検索して物色中。
中途失明の私は、商品写真で色をを見ることができないので、
商品説明の色の名前が頼りになるのですが、
一工夫あるショップさんはありがたいです。

たとえば、タオルの色が商品のサブタイトルになるのですが、
これが「ブラウン」、「ピンク」や「グリーン」ではなく、
「モカ」や「アーモンド」、
「コーラルピンク」、
モスグリーン」、「リーフグリーン」など
自然にある色の名前だとイメージがしやすいのです。
ミルク入りのコーヒー、アーモンド、赤珊瑚、苔、若葉、
ああ、あの色ねと瞼に浮かびませんか?

色は無限にありますが、
「言葉が色を生み出す」というのをご存知でしょうか。
これは目が見えている人でも、
色の名づけがないと「色が見えない」のです。
*もちろん目に障害おお持ちの方は話は別です。

赤は、「こういうのを赤といいます」という言葉の名づけによって
目は「赤色だ」と意識できるようになります。
そして赤にもいろいろあって、
茜色はこう、煉瓦色はこう、と言葉がつくと、
それぞれの色の判別がつくようになるのです。
グラデーションも違いを言葉の名づけによって意識できるようになる。

言葉の数だけ、色の区別ができるようになる。
たとえば赤が赤しか言葉がなかったら、
茜も煉瓦も朱も珊瑚も「赤」。
言葉の名づけがないと、微妙な違いは、
見えてはいるのに、見分けがつかない。
見えていても「存在しない」と同じこと。

日本は古から色の名づけ言葉が豊富ですね。
豊かな土壌と四季で植物の種類が多いことと、
あらゆる草木、花から染料をつくり、
そのひとつひとつに色の名づけをして区別をつけた。
随分前に伝統色をまとめた事典を見ては、
その数と細かなグラデーションに仰天したものです。

さて。前述のショップさんはおそらく、
「モカ」色にしようと決めてから、タオルを染めていったと思います。
「モカ」という言葉が先にあって、「モカ」色のタオルは出来上がった。

ちょっと難しかったですかね?
次回は「言葉が、味覚も嗅覚も生み出す」ことをお送りします。

(続きます)

ここがどこなのか

アイメイトのサンダーと歩いていて、道に迷ってしまいました。
「あ、しまった」と気づいて立ち止まって、
しばらくの間、車や電車の走行音がどちらに聴こえるのか、
現在地を判断する音を聴いていました。

こんなときは「分かるまで動くな」。
たとえば、慣れた低山でも、吹雪でホワイトアウトして遭難するようなもの。
ビバークして吹雪が止むのを待つのだ。
吹雪の時は動くべからず。(吹雪じゃないけどね)

何がおきたのか、ここがどこなのか、止まって考えていたら、
女性が走り寄ってきて声をかけてくれました。
私とサンダーが、あんまりにも動かなかったので心配して来てくれたのだとか。
よしもとばななさんが「道ゆく人が親切で感動した」と書いていた名古屋。
私も「そうかもしれない」と思います。ありがたいです。うれしい。

親切な女性に現在地を教えてもらって、
なぜ方向が分からなくなったのかも分かりました。
頭の中と、実際の道のりがずれていたのです。
しかし私の頭の中では「そのつもり」なものですから、
すぐ気がつけないものなんですね。

 迷う筈のない所だったのですがね、
いま新たな歩行ルートを開拓しているので、こんなこともあるわけです。
迷って間違えてリカバリーして、私のなかに「新しい地図」ができていきます。

しかし日が暮れかけてから新ルートに出たのも良くなかった。
この時期は、あっという間に日没になりますからね。
逢魔が刻の前に下山しなさい、ですよ(山じゃないけどね)。

地下鉄東山線にホームドアがつきます

名古屋の地下鉄・東山線で、ホームドアの設置工事がはじまりました。
自宅と当ルームの沿線の「市営あおなみ線」や、
地下鉄桜通線は、比較的新しい路線なので開業からホームドアがついていますが、
名古屋で最も古くて乗降客がダントツに多い東山線は、
いままでホームドアがありませんでした。
2015年度中に、すべての東山線の駅に設置完了とか。

これは視覚障害者団体が20年以上要望してきた悲願でもあるそうです。
というのも、柵のない駅のホームは転落の危険が。
たとえば、目隠しをして一本橋を渡るようなもので、
冗談でなく「命がけ」なんですよね。
私の白杖利用の知り合いに大怪我をした経験をもつ人がいます。
線路に落ちて怪我をした、骨折した、頭を打って意識を失った、
まれに電車に接触して亡くなる方もいらっしゃるのです。
電車がきたと思ったら、対岸のホームだったということも。
そこで乗りこもうとして、車両がなくて誤って転落する。
また、車両の連結部をドアと勘違いして危ないことも。
私はアイメイトのサンダーと歩くようになり安全になりましたが、
それでも、柵のない狭いホームに人が満載の、
東山線の名古屋駅や栄駅利用は緊張します。
車椅子ご利用の方、
小さなお子さん連れの方や、ご高齢の方も同じでしょう。

関東のリハセンの歩行指導員さんがラジオで話されていましたが、
近年は、視覚障害者が白杖を振って歩く直前を
横切る健常者の方が増えているそうです。
「前を見ていない人や、先を急ぎ待ってくれない人が増えた」とか。
私は白杖で歩行していた頃よりも、
アイメイトのサンダーと歩くようになってから、
相当に目立つようで、道を空けてくださったり待ってくださる人は増えましたが、
最近は駅のホームや階段で「歩きスマホ」をされる人も多くて、
サンダーと注意していても、ぶつかってこられたりします。

ともあれ東山線にホームドアが順次設置されているのは本当にうれしいです。
このビッグニュースを母からきいて、
うれしさのあまり万歳三唱しましたもん。