月別アーカイブ: 2018年12月

ナンテコッタイ!

とあるコンサート会場にて。
名ピアニストのピレシュは、オーケストラが演奏を始めた途端、
自分の大きな間違いに気がついた。
なんと、曲目を間違えて、違う曲を弾くつもりでいたのだ。
ナンテコッタイ!

ピアノの前で、頭を抱え左右にイヤイヤする姿はコドモのよう。
大慌ての不幸なピアニストに、
名指揮者のシャイーは「どしたん?」と聞くと、
「…間違えてしもた。違う曲をやるつもりやってん…。とピレシュ。
なのにシャイーは、タクトを振ったままオーケストラの演奏を止めない。
「アンタはんは、これ去年も演ってるさかい、
アンタはんならできるはずや!」
そんなこんなで、自分のピアノの出番が近づいてくる。
ハンベソのピレシュは、口をへの字にして渋々ピアノを弾きはじめると、
なんと最後まで完璧に美しく演奏したのだった…。
ナンテコッタイ!!

クラシック好きな友人から聞いた、
「ピレシュの悪夢(珍事?)」なのだけれども、
私は大抵のことだったら、「ピレシュよりはマシだ」と思えるようになった。
気の毒なことに、ピレシュは急な代役を引き受けたうえに、
曲目も、伝言ゲームのように伝わっていくうちに、
どこかで間違っってしまったのだとか。
しかし、それでも完璧に演奏しちゃうなんてシビレるなぁ。

そうそう、私も同じようなことがあったっけ。
高校の、期末試験だったと思うのだけど、
一日まるっと試験科目を間違えてしもたのだ。
「試験勉強は一夜漬け」が、当時のモットーだった私は、
もちろん、ピレシュのような完璧な出来とはいかず、
数学は赤点と、散々な結果に。
受験科目じゃない現代社会は最高点だったのは、
慰めになったような、ならなかったような。
それ以来、大抵のことは、
「あの時よりはマシだ!」と思えるようになったのでした。

Maria Joao Pires expecting another Mozart concerto during a lunch-concert in Amsterdam – YouTube

ステキな服を着て街へ出よう!/「エエマイシャツを着た男たち」佐藤加奈・著

定年退職した父は戸惑っていた。
仕事人間だった父は、職場の他に行く所も思いつかなくて、
スーツの他に、毎日どんな服を着たらいいのかサッパリ分からなかった。
そこで、私は父に服をいくつかプレゼントして、
何通りかの決まったコーディネイトをしてあげた。
すると、父のお出かけがグーンと増えたのだ。

赤や黄のチェック柄のシャツを着たり、
高オンスのデニムやチノを履くようになった父は、
「かっこいいですね」とか、「似会ってます」と、
また見ず知らずの人に言われたんだ、と嬉しそうだった。
服で、見た目も気持ちも行動も変わるんだなと、私は驚いたのでした。

さて、前置きが長くなったけれど、
私の長年の友人でもある、写真家・佐藤加奈さんの写真集が出ました。

世界に一枚きりの派手なシャツ着た、
フツーのオジサンや、フツーじゃないオジサンたち約100名のポートレート集。
人物をよりカッコよく撮る、写真家の佐藤さんと、
人物をよりカッコよくスタイリングする、スタイリストの谷山伸子さん。
長いつきあいの二人のタッグにかかれば、
クールに! ちょいワルに! カッコよく大変身!
港街・神戸の魅力もたっぷり!

楽しくて見飽きない!と評判の理由は、
服が、スタイリングが、ロケーションが、
そして、自信のようなものが人を変える瞬間を切り取っているから。

*内容(ookデータベースより)
60年の東京生活後、神戸へ帰った画家・岡田が見たものは、
家から出ようとしないじいさんたち。
「こんな素敵な街でなんてこと!世界に一枚きりの派手なシャツ着て街へ出よう!」
これに賛同したシャツテイラー・浦上と中高年、その予備軍たちで作った本。
“歳は楽しく遊びながら取ろう!”

・『エエマイシャツを着た男たち』
岡田嘉夫(シャツデザイン) 佐藤加奈(フォト)・著
出版ワークス/2018.11.27