とあるコンサート会場にて。
名ピアニストのピレシュは、オーケストラが演奏を始めた途端、
自分の大きな間違いに気がついた。
なんと、曲目を間違えて、違う曲を弾くつもりでいたのだ。
ナンテコッタイ!
ピアノの前で、頭を抱え左右にイヤイヤする姿はコドモのよう。
大慌ての不幸なピアニストに、
名指揮者のシャイーは「どしたん?」と聞くと、
「…間違えてしもた。違う曲をやるつもりやってん…。とピレシュ。
なのにシャイーは、タクトを振ったままオーケストラの演奏を止めない。
「アンタはんは、これ去年も演ってるさかい、
アンタはんならできるはずや!」
そんなこんなで、自分のピアノの出番が近づいてくる。
ハンベソのピレシュは、口をへの字にして渋々ピアノを弾きはじめると、
なんと最後まで完璧に美しく演奏したのだった…。
ナンテコッタイ!!
クラシック好きな友人から聞いた、
「ピレシュの悪夢(珍事?)」なのだけれども、
私は大抵のことだったら、「ピレシュよりはマシだ」と思えるようになった。
気の毒なことに、ピレシュは急な代役を引き受けたうえに、
曲目も、伝言ゲームのように伝わっていくうちに、
どこかで間違っってしまったのだとか。
しかし、それでも完璧に演奏しちゃうなんてシビレるなぁ。
そうそう、私も同じようなことがあったっけ。
高校の、期末試験だったと思うのだけど、
一日まるっと試験科目を間違えてしもたのだ。
「試験勉強は一夜漬け」が、当時のモットーだった私は、
もちろん、ピレシュのような完璧な出来とはいかず、
数学は赤点と、散々な結果に。
受験科目じゃない現代社会は最高点だったのは、
慰めになったような、ならなかったような。
それ以来、大抵のことは、
「あの時よりはマシだ!」と思えるようになったのでした。
Maria Joao Pires expecting another Mozart concerto during a lunch-concert in Amsterdam – YouTube