どちらにフォーカスするのか

7月。
名古屋市社会福祉協議会の、福祉学習サポーター養成講座を受講してきた。
私は昨年も受講しているのだけれども、
講師の日本福祉大学 原田教授のお話は、毎年聴きたいほどなのだ。

さて、一般の人向けの福祉教育といえば、
障害を体験するタイプの、体験型学習が盛んに行われてきた。
高齢者疑似体験やアイマスク体験、車椅子体験を、
学校や職場、集まりなどで体験した人も多いのだけれども、
原田教授によると、思わぬことが進んでしまったという。
それは、高齢者や障害者への偏見や差別意識が、
水面下で静かに進んでしまったというのだ。

相手の立場を体験する、それは良いことじゃないの?
しかし、そればかりではないのも、人の意識の難しいところ。
高齢者疑似体験をして、「年寄りになりたくない」 「高齢者は役にたたない」
アイマスク体験をして、「見えないって不幸だ」 「盲人は何もできない」
そんな間違ったメッセージが刷り込まれていく危うさがある。
実施する側も、その危うさに気がつかないままに、
知ってか知らずか、困難さや怖さを強調してしまうこともあるだろう。
原田教授は、昨年の障害者施設で起きた痛ましい事件で
「よくぞやってくれた」という意見が少なからずあったことにも触れた。

福祉学習の新たなムーブメントを作っていきましょうと原田教授は語る。
たとえば、ひとりのお年寄りの、それまで歩んできた道のりを知ることだったり。
障害者と一緒に、趣味やスポーツを楽しんだり、共に何かを取り組んでみたり。
障害にフォーカスするのではなく、
「その人」にフォーカスする福祉学習だ。

これは、本当に大事なことだと私も思う。
不便だ、辛いという断片をただ知るのではなく、
その人が、どう生きているか 生きてきたのかに共感し、
自分の人生に、自分が生きている社会に、どう反映させるのか?
人にフォーカスするということは、
生きるということにフォーカスすることなのでした。

どちらにフォーカスするのか」への2件のフィードバック

  1. 短い実践教室の中で、目隠しして独りずつ歩かせている地域があります。
    これは怖いという意識を植えつけるだけ。
    社協に講義すると「私が研修を受けたとき、県内ではみんなそのようにしているから」とのこと。
    ペアになってのアイマスク歩行は悪いことではありません。お互いの信頼関係が深まったと小学生でも言ってくれます。

  2. コメントをありがとうございます。

    単独のアイマスク体験の実施、
    私も怖さを強調するだけだと思います。

    ペアでのアイマスク体験でも、
    怖さを植え付ける恐れがあると、
    福祉大学の原田先生はおっしゃっていますし、
    私も「そういえば」と、思い当たることがありました。
    「むかし体験してトラウマになって…。」と、
    おっしゃる方に何人も会っているからです。
    「おばけ屋敷みたいだった」と言う方も。
    信頼とか協力とか、
    実施する側が求める答えを子どもは察してアンケートに書くこともありますし。
    「闇に慣れてる視覚障害者が想像する以上に、
    健常者の方には怖さがあることを忘れてはいけないですね。

    誘導方法を教えることに重点を置きがちですが、
    誘導のされ方もシッカリレクチャーした後に実施することが大事ですね。
    誘導されかた(身体の使い方なども)を聞かされず、
    いきなりスタートは、本当は無茶な話で、
    私は体験してもらう前に、アイマスクをしないで予行練習してもらったり、
    イメージ誘導による体験をしてもらっています。

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