私は、「サザエさん」で字を覚えた、と言っても言い過ぎじゃない。
テレビアニメではなく、マンガの方だ。
母が長谷川町子先生の姉妹社の単行本を、昔からコツコツ集めていて、
私が高校生の頃には、たしか70くらいの全巻が揃ったと思う。
サザエさん原作は新聞連載、始まったのは終戦から間もない頃。
長谷川先生の回想録「サザエさん うちあけ話」なら、戦前から戦争中の話もある。
磯野家や長谷川家の日常を、ユーモラスに描いたコマの中に、
配給キップとか、闇米とか、GHQなんて単語が出てきた。
小さかった私は、意味がよく分からなかったけれど、
そういうことがあって今があるんだな、ってことは分かった。
中学生の頃、クラスのグループ展示で、
「戦中の暮らし」をテーマに企画したことがあった。
見よう見まねで調理してみた「すいとん」も試食してもらった。
意外と美味しいね、という評判だったのだけれども、
いろんな美味しさに慣れた私たちには、ちょっと珍しいのであって、
くる日もくる日もこれじゃ堪んないよね、やっぱりさ。
そんなクラスメイトとの会話を思い出す、終戦の日。