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再掲*四葉のクローバー

きょうはフレディ・マーキュリーの30回目の命日ということで、
3年前の今日にアップしたブログを再掲します。

2018年11月24日

ジム・ハットン著、
「フレディ・マーキュリーと私」を読んでいる。

なにもかも手に入れたスーパースターのフレディが、感激したプレゼント。
サヴォイ・ホテルで週給60ポンドで働く理容師のジムは、
フレディの友人たちのようには、高価な誕生日の贈り物はできなかった。
気が引けたジムは、皆がいない場所でフレディに贈り物を渡すことにした。

「すまない。僕には、これしか君にあげられるものがないんだ」と
ジムが申し訳なさそうに差し出したのは、
ティッシュにはさんで押し葉にした、四葉のクローバー。
それを受け取ったフレディは、もう嬉しくて嬉しくて、
「ねぇ!みんな見て!ジムがこんなに素敵なプレゼントをくれたんだ!」と、
四葉のクローバーを見せに、皆の所へ飛んで行ったのでした。
ジムは恥ずかしさで、顔が真っ赤になったとか。

私は読んでいてクスクス笑ってしまったのだけれども、
アイルランドからロンドンにやって来たジムは、
四葉のクローバーをお守りにして大事にしてたろうと想像した。
ああ、そうだ。フレディの言う通りだわ。
こんなに素敵な贈り物はないんじゃないかと、私も思ったのでした。

この本の初版が本屋に並んでいた頃、私は視力がまだあって、
フレディとジムが並んで座っている写真が、本の表紙だったと思うのだけれど、
朴訥とした感じのジムの隣に、
とても穏やかな表情のフレディが写っていたことを憶えています。

再掲*声の色

きょうはフレディ・マーキュリーの30回目の命日ということで
2018年11月19日のブログを再掲します。

先週のことになるのだけれども、
「今日は一日、クイーン三昧」のラジオオンエアを聴いた。

…いい曲いっぱい。
なんか、最近にない音がしてると思ったら、オンエア全てがレコード音源だった。
ふくらみのある豊かな音。
レコードに馴染みのない、若いリスナーなのか苦情があったようだけど、
レコードならではの針飛びや、
針の回る、プチプチ聴こえる雑音も懐かしい。
そして、
素晴らしいフレディの歌唱に、私は惚れ惚れとしたのでした。

4オクターブの声域と言われたフレディだが、
数年前に、驚きの研究結果が発表された。
最新の技術を駆使した、科学的な解析によると、
「やっぱりフレディ、普通じゃないわ!」と思いきや、
なんと、一般的な成人男性並みの声域だったと判明したのだ。

エーッ!?
短髪のマッチョ姿のフレディしか知らなかった私が、
長髪の王子様だった頃のフレディの姿お見た時も、
それはそれは驚いたものだけれども、
フレディが、ごくごくフツーの声域の持ち主だったなんて!?

じゃあ、どうやって、あの超人的な歌唱が実現したの?
研究チームによると、フレディの喉の使い方に秘密があって、
ビブラートの揺れがかなり特殊で、高速かつ複雑なものだという。
また、フレディの話す声や歌う声は、
高い声でも低音も同時に鳴っていることが分かった。
これは、ホーミーの歌唱法と同じで、
地声の他に、倍音が加わっているということ。
通常は発声に使われない、声帯のヒダの部分さえも音を発しているというのだ。

…そうだったのかー!
野球のピッチャーみたいに、球が速けりゃいいってもんでもなくて、
意外と声域や声量に恵まれた歌手が、
一本調子で、聴いていて面白くないってことがある。
声が綺麗なだけでは、物足りなくなったりもするし、
上手いだけの歌、感心するけど、それだけ。

反対に、美声とはお世辞にも言えないシンディ・ローパーの声が、
妙に心に響いたりするし、
上手いソウルシンガーが山ほどいたのに、
ダイアナ・ロスの、ハスキーなんだけどサラっとしてる蜂蜜声は他にない。
フレディも、正式に声楽を学んだ人のほうが上手いのかもしれないけど、
あの色彩豊かな歌は、ちょっと異質だ。

…と、いま書いて気がついたのだけれど、
たしか、シンディは、アート専攻だったはず。
ダイアナは、幼いマイケル・ジャクソンに絵の手ほどきをしていた話は有名で、
フレディは、アートカレッジでグラフィックデザインを学んでいた。
声と言う色で、歌を描いているのかな。
なんか、そういう感覚を感じるアーティストの歌、
茶目っ気っていうのか、
チャーミングな感じがするのは何故だろう?

フレディ没後30年/猫とコタツとラジオと私

きょうはフレディ・マーキュリーの30回目の命日なのだそう。
あるバンドやミュージシャンと同じ時代に生きることは、奇跡的なことだと思う。

70年代のクイーンの全盛期には、私はまだ小さくて間に合わなかったのだけれども、
80年代のRADIO GA GAや、映画フラッシュゴードンのテーマ、
I was born to love youはオンタイムだった。
伝説のミュージシャンとして、後からフレディを知るのではなくて、
最新ヒットとして、ラジオから流れていたのを体験できたのはよかったなぁと思う。
(なんと、クイーンの初来日コンサートを亡き親友は姉上と見たそうな!)

インターネットも携帯もなかった時代、
田舎の中高生だった私にとって、
週末の午後にやっていた洋楽ヒットチャートのラジオ番組が、情報源であり楽しみだった。
ラジオ番組をハシゴして聴いていたら、いつの間にか外が暗くなっていたことや、
近くの田んぼから漂ってくる籾殻を焼く匂いとか、
コタツの中に猫と大判焼きが入っていたことなんかを思い出す。
思い出はノスタルジックなんだけど、
ある種の曲がいつまでもキラキラしてるのは、ポップスの魔法なのかしら?

種ともこさんのこと

ミュージシャンの種ともこ(たね ともこ)さんがガンの手術を受けていたと知る。
種さんの公式サイトによると、
2か月前に入院し手術を受け、今は自宅で療養中だという。
回復と根治を心から祈っている。

種ちゃんは、
(種さんの古いファンは親愛をこめて「たねちゃん」と呼ぶ。以下、種ちゃん)
私がライブに行った回数が一番多いミュージシャン。
80年代後半から90年代前半がほとんどだったけど、
東名阪のホールツアーの他にインストアライブ、学園祭ライブを含めると、
たぶん20回くらい種ちゃんのライブを見てきたと思う。

種ちゃんは作詞作曲はもちろん、
80年代では珍しく曲のアレンジも打ち込みも自分でやっていて、
自宅録音の先駆けのような人なのだ。
歌が上手くて、
「これは種ちゃんだな」と一聴してわかるファニーな声の持ち主。
マルチな才能で凝り性、楽曲のクオリティの高さや特異なオリジナリティから、
「日本のケイト・ブッシュ」とも呼ばれていたのでした。
だからといって、種ちゃんの曲は難解さはなくてキャッチーでポップ。
ただ、曲の物語の設定が一風変わっていた。
はじめて一人でオバアチャン家でクラシカルなお盆を過ごし、
カルチャーショックを体験しちゃったり、
ついでに初恋も体験しちゃう小学生の男の子の歌
「キュウリ de バケーション」、
片思いの女の子の前でカッコいいとこ見せようと張り切るも見事に玉砕する
「悲しき球技大会」、
片思いの同盟ができたら会長になりたい、なるに相応しい、
そしてみんな成就したら喜びあって解散すると(ひとり心の中で)高らかに宣言する
なんとも気弱な、それでいて同盟の会長に就任したいという少女の歌
「片恋同盟」など、
ラブソングなんだけど、設定が少々おかしい。
「安売り水着を結局買ったアタシの歌」に、
「タイムドライバーは仮免」など、
イマジネーションがふくらんでしまうような曲のタイトルの数々に、
「この人はコピーライターなんだろうか」とはじめ私は思っていた。

30年前の種ちゃんのコンサートといったらステージを動きまくりの踊りまくり!
それでいて、アルバムクオリティの演奏と歌をこなしてしまう。
おまけにMCが面白かった。
種ちゃんがケニアに旅行に行ったときの、
野生の動物(何だったか忘れた)と睨みあいながら、
サバンナで「大きな便り」をいたした話とか大笑いしたなぁ。
その後はじっくり聴かせるライブや、いち早く映像の凝った前衛的なライブをされていた。

しかし、30年の間に、
私自身の環境も変わり、
種ちゃんの音楽性も変遷され、すっかり離れてしまった。
東京に何かの用事があって、
日にちが合ったので寄った渋谷(銀座だったかな?)のアップルストアでのライブ以来、
ここ15年以上は種ちゃんをライブで見ていない。
それどころか知らない曲が増えてしまった。

でもね、
私がキャンプをはじめたのも、一人旅が好きになったのも、種ちゃんの影響があってのこと。
何冊かは当ブログで紹介しているけど、
読書家の種ちゃんがおすすめした本を本屋で探して読んでいた。
私の本の世界をひろげてくれたのも種ちゃん。
間違いなく私は種ちゃんから大きな影響を受けてきた。
直接お会いしたことはないけど、とても身近に思える人。

長い間ライブに行かずの私が言うのもなんですが、
そして、ご本人の目にとまるかどうかも分かりませんが、
どうか種さん、ご回復されてライブをしてください。行きます。

X’mas 種ともこ – YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=a1wH8SQKqtA

遊佐未森の「嵐が丘」がすごい/音楽の出会いは人生を変えちゃうよね!

遊佐未森さんがカバーしたケイト・ブッシュの「嵐が丘」を聴く。
噂には聞いてはいたけど、すさまじくよかった。
↓BSフジ「ずっと好きな歌」より

嵐が丘 – YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=BTpFND9ii5cケイト・ブッシュの「嵐が丘」は、

さんまさんの番組「恋のから騒ぎ」のオープニング曲になってたので、
ケイトの「嵐が丘」を聞いたことのある人は多いはず。
エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」のキャサリンが主人公のこの曲は、
ケイトのオリジナルはどこか底知れぬ怖さがあるけど、
遊佐さんのカバーは、キャサリンの亡霊が泣いてる感じになってると思った。
曲のサビの、
「ヒースクリフ イッツミー キャシー」(ヒースクリフ 私よ キャシーよ」
ココ、ケイトは案外、淡々と歌っているけど、
(だからコワイのかな?関係ないけど、目が見えてる時、鳥居みゆきはケイトブッシュ似だと思った。)
遊佐さんは、「キャシー」のキャにツイストが入っているって言うのだろうか、
(キャサリンの亡霊を見るのはロックウッドだけど)
キャサリンが涙ながらにヒースクリフに叫んでいる感じがする。
この動画を見た人のコメントによると、
遊佐さんは、ケイトの独特なマイムパフォーマンスよろしく、
盛んに手や身体を動かしながら歌っているようだ。
歌う時の激しい動きは、
牧歌的で穏やかな作風の遊佐さんにしては珍しいかもしれないけど、
声楽を学び音大ではリトミック専攻だった遊佐さんだから、
スイッチが入れば違う遊佐さんになるだろうとは思ってたし、
もともと遊佐さんの声質がケイト・ブッシュに似ていて、
(そしてアッコちゃんにも声質が似てる)期待しながら聴いたけど、
もう、私なんかの想像を超えてた!
ケイトブッシュが遊佐未森に降りてきた、というコメントも見かけたけど、
きっとキャサリンが遊佐さんに降りてきたんだと思うな。
目が見えないのが残念、映像で見たかったなぁ。

実は私、視力がまだあった頃、
とあるコンサートの楽屋のお手伝いで遊佐さんにお会いしたことがある。
ちょうど20年前の神戸チキンジョージだったんだけど、
遊佐さんの他に楽屋にいたのは、
アッコちゃんこと矢野顕子さん、ター坊こと大貫妙子さん、
ブームの宮沢和文さん、おどるポンポコリンの近藤房之助さん、
パール兄弟のベーシストのバカボン鈴木さん、パーカッションの浜口茂外也さん、
今年お亡くなりになったドラマーの村上ポンタさん、ギタリストのチャーさん等々。
名ギタリストだった故・大村憲司さんのトリビュートコンサートだけに、
とんでもなく豪華なメンバーが楽屋に集結しているではないですか!
アッコちゃんも大貫さんもパール兄弟も、
ミヤくんも、そして遊佐さんも聴いていたアタシは、
「これは夢ではなかろうか」と思わずホッペをつねったほど。

人生には思ってもみなかったご褒美があるもので、
「アンタは将来、ター坊に頼まれて歌詞カンペのコピーとるんだよ」
と若かりしアタシにアタシは教えてやりたい。
(ちなみに曲は、「新しいシャツ」。)

この大村憲司さんのトリビュートコンサートの前日は、
亡き親友とともにアッコちゃんの出前コンサートを主催していた。
なので、わたし達にとって夢のような2日間だったのだ。
10代20代の頃のアタシに、
将来こんなご褒美があるよ、と教えてあげたいし、
アナタが夢中になってくれたおかげで、こんなご褒美もらったよ、
と昔の私に感謝したい気持ちにもなる。

どうして若い頃、あんなに音楽を聴いていたんだろう?
いや、あんなに飽きもせず聴けたのだろう?
ほっといたら一日中、眠っている以外は、
好きなミュージシャンの音楽を聴いていた。
音楽を聴いている時間の少しでも勉学に振り分けていたら、
ちょっとは違った人生にもなったかもしれないが、
それがなんだっていうのさ、て感じ。
今はあの頃ほど音楽を聴かなく、聴けなくなった。
そんな変化を少しさみしく感じたりもする

ご褒美の楽屋お手伝いに話を戻すと、
アッコちゃんとター坊の仲良しトークに素知らぬ顔して耳ダンボで聞いたり、
ミヤくんにドリップしたコーヒーをお出ししたら、
ミヤくんが「美味しいですねこのコーヒー」と言ってくれたりして(やさしい人だ)
これはスタバのケニア。アッコちゃんが好きな豆なのよ知ってた?ミヤくん!
と、心の中で答えて微笑む私。
ミヤくんの瞳の色が薄いアッシュカーキで、
綺麗な澄んだ目にドキドキしちゃったのでした。
一緒に楽屋お手伝いしたグルメな親友が用意したアイルランド紅茶に、
ケルト音楽好きで、アイルランドとスコットランドでアルバム録音したことのある遊佐さんは、
「あ、ビューリーズの紅茶!」とすぐに反応してらしたのはさすが!
そこで私は遊佐さんからアイルランド滞在の話を聞いたりしてね。
そして、前日に私たちがアッコちゃんの出前コンサートを主催したと知り、
「矢野さんお好きなんですね」と遊佐さん。
私は「はい!…あの、私、遊佐さんもファンなんです」と答えると、
不意をつかれたのかちょっと困ったようなお顔をされて戸惑ってた 笑。
ここはアッコちゃんファントークしたほうがよかったのかな?と後で思ったりしてね。
優しい遊佐さんはしばらく私に話しかけてくれたんだけど、
遊佐さんは想像してた通りの、ほわーとした天然な方でした。
(遊佐さんのご親友は、女優の斎藤由貴さん、檀れいさん。わかる気が)
そんな天然ほんわか遊佐さんだからこそケイトの嵐が丘のカバーは、
ケイト・ブッシュかキャサリンが降りてきた!という驚きと凄みがあるのでした。
音大を卒業したらクラシック音楽の道に進むつもりだった遊佐さんは、
ケイト・ブッシュの音楽を聴いて衝撃を受け、
シンガーソングライターになることを決めたそうだ。
ほんと、音楽の出会いは人生を変えてしまうんだな!

さて、秋の夜長は、何を聴こうかな?
ケイト・ブッシュの「センシュアルワールド」がぴったりだ。
そういえば亡き親友も、このアルバム持っていて、
「矢野顕子好きはケイト・ブッシュ好き」
の図式は当たっていると思ったものでした。
(また音楽談義したいなぁ。イッツミーって出てきてよ)