月別アーカイブ: 2018年8月

星の王子様とバオバブ

「星の王子様 バオバブの苗木」というタイアップ商品が
抗議が殺到し、販売中止になったそうだ。

それは、そうだよなぁと私は思ったのだった。

もし、企画の段階で、
星の王子様を読んだことのある子どもに相談してたら、
「そんなのダメだよ!」と、即答するだろうにね。
とっくの昔に大人になった私だったら、
うっかりと「いいんじゃない?」と言いかけて、
いや、まてよ?と少し考えてから、
「それはちょっと…」と、言葉を濁すかしら。
物語の中で、王子様は自分の星のバオバブの芽を引っこ抜いて、
バオバブが育ち増えるのを食い止めようとしていたからだ。

うっかりした大人達が、バオバブの成長をほったらかしにしていたので、
ある星は取り返しのつかないことになった。
星の大きさくらい巨大化したバオバブは、
その太い根が、星の裏側の反対側まで突き破って、
しまいに星は割れてしまったのだ。

もちろん実際のバオバブは、そんなことはないのだけれど、
作者のサン・テグジュペリが、
星の王子様のバオバブを、ファシズムの象徴として描いたのは明らかなこと。
物語に出てくる、王様や実業家や呑み助や点灯夫みたいな、
うっかりした大人達が気がついた時には、ファシズムが世界を席巻していた。

サン・テグジュペリは、ナチスドイツと戦う飛行士でもあった。
偵察飛行に出たまま、星の王子様のように忽然と姿を消してしまう。
1998年に、フランスのマルセイユ沖の海底から
搭乗していた機体の残骸と、
自分と妻の名が刻まれた、愛用していた銀のブレスレットが発見されたっけ。

だから、王子様とバオバブの抱き合わせ商品は、
いかに大人はうっかりしているか、を再確認させてくれたのだけれども、
実に、うっかりとした大人である私は、
なんかね、冷や汗が出る思いなのでした。

*星の王子様
サン・テグジュペリ 著/岩波少年文庫

ダイアナ

高校の時、時代はレコードからCDへの移行期で、
レンタル屋で中古レコードが大放出されていた。
最終処分で、50円になっていた残り物をまとめて買って帰ったのが、
私のモータウンサウンドと、
ダイアナ・ロス&ザ・スプリームスとの出会いだった。

アレサも好きだけど、ダイアナはもっと大好き!
あのチャーミングな蜂蜜声、
歌は上質で滑らか、リズム感というのか、タイム感が、いやもぉ最高!
歌だけじゃなく、セリフやブレスも聴きいっちゃう!
カセットテープに編集して、テープが伸びるくらい聴いたっけ。
いや、聴きすぎたのか、
テープがデッキの中でグニャグニャになったような気がする。
50円だったから、すごいコストパフォーマンスの良さ。

今はもう、当時のレコードもカセットテープも手元に残っていないのだけれども、
だからといってCDで買い直すことがなかったのが不思議。
何故か、何度も買うのをためらってしまう。
蟹を一生分食べると、食べられなくなると言うじゃない?
私はスプリームスを、一生分を聴いてしまったに違いないと思っていた。
また聴いたら、つまんなく思えたら嫌だなぁ…。

しかし、何十年ぶりに聴いたアレサは、
自分の中では「打ち止め」感が全くなくて、
その勢いでスプリームスをyou tubeで聴いたら…。
一生分がどうのじゃなかった!
私にとって一生ものなんだわ!と思ったのでした。

アレサ

バイト代で初めて買ったCDは、アレサ・フランクリンだった。
グラフィックデザインの専門学校の卒業制作に、
アレサの60年代のヒット曲のタイトル名を拝借してしまったくらい、
田舎の二十歳には、アレサの歌声はヘビー級パンチだった。

アレサが「フリーダム!」と叫べば、
アタシもコーラスのレディたちと一緒に「フリーダム!」と叫び、
アレサが「敬意よ!」と叫べば、
アタシも「敬意を!」と叫ぶ。
駅に降りて、暗い田んぼ路を自転車で激走する。
ウオークマンのイヤホンからアレサが励ましてくれた。

アレサの訃報記事を讀んで、
アレサは、公民権運動と女性解放運動の「顔」だったことを知った。
知ったアタシは驚かなくて、
「「「「それはそうだろう!」と思ったのでした。