星の王子様とバオバブ

「星の王子様 バオバブの苗木」というタイアップ商品が
抗議が殺到し、販売中止になったそうだ。

それは、そうだよなぁと私は思ったのだった。

もし、企画の段階で、
星の王子様を読んだことのある子どもに相談してたら、
「そんなのダメだよ!」と、即答するだろうにね。
とっくの昔に大人になった私だったら、
うっかりと「いいんじゃない?」と言いかけて、
いや、まてよ?と少し考えてから、
「それはちょっと…」と、言葉を濁すかしら。
物語の中で、王子様は自分の星のバオバブの芽を引っこ抜いて、
バオバブが育ち増えるのを食い止めようとしていたからだ。

うっかりした大人達が、バオバブの成長をほったらかしにしていたので、
ある星は取り返しのつかないことになった。
星の大きさくらい巨大化したバオバブは、
その太い根が、星の裏側の反対側まで突き破って、
しまいに星は割れてしまったのだ。

もちろん実際のバオバブは、そんなことはないのだけれど、
作者のサン・テグジュペリが、
星の王子様のバオバブを、ファシズムの象徴として描いたのは明らかなこと。
物語に出てくる、王様や実業家や呑み助や点灯夫みたいな、
うっかりした大人達が気がついた時には、ファシズムが世界を席巻していた。

サン・テグジュペリは、ナチスドイツと戦う飛行士でもあった。
偵察飛行に出たまま、星の王子様のように忽然と姿を消してしまう。
1998年に、フランスのマルセイユ沖の海底から
搭乗していた機体の残骸と、
自分と妻の名が刻まれた、愛用していた銀のブレスレットが発見されたっけ。

だから、王子様とバオバブの抱き合わせ商品は、
いかに大人はうっかりしているか、を再確認させてくれたのだけれども、
実に、うっかりとした大人である私は、
なんかね、冷や汗が出る思いなのでした。

*星の王子様
サン・テグジュペリ 著/岩波少年文庫

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