「癒す心、治る力 自発的治癒とはなにか」 アンドルー・ワイル・著

…不思議なことがあるものだ。
公園を散歩しているとき、
見知らぬ人が「その人の治癒の体験」を語ってくれることがあります。

「寝たきりの植物状態だったけれど、こんなに回復したんだよ」とか。
「事故で大けがを負って、もう普通の生活はできないと宣告されたけれど、
この通り、普通に暮らしています。」とか。
ある人は、絶望的だったご自身の心の再生の道のりを。

公園で出会った人たちだからかもしれません。
「緑が、自然が癒してくれた」と一様に語ってくれます。
そして「治らないと思いこまされてはいけないよ」と言うのです。
その人たちのストーリーは多様なのに、この二つはなぜか共通していました。
だから、あなたもね…。
そう言って去っていくのも同じなのです。

ふと、統合医療の第一人者、
アンドルー・ワイル博士の名著「癒す心、治る力」を思い出します。

統合医療とは、人の自然治癒力(自発的治癒)を大切にして、
身体だけでなく心と霊性に目を向けた、「まるごと(ホリスティック)な医療です。
現代医学と、東洋医学などの代替療法を上手く使い分け、
ときには心理療法やスピリチュアルなアプローチも。

もともと人間には、治癒の装置と回路が備わっている。
あとはいかにスイッチを押すかだ、とワイル博士は言います。
治癒系のメカニズムを解説し、
それをアシストするもの(食事、療法、暮らし方など)を説明しているのですが、
スイッチを押すかどうかは、心も関係するのではないか、と提言しています。

印象的なのは、「病気と戦わない」意識の人が治癒のスイッチを押すという報告。
***本書より引用
「その病気の受容は、
自己の受容という、より大きな受容の一部であることが多い。
自己の受容は、
重要な心の転換の現れであり、パーソナリティの変容が始まる。
それによって、病気の治癒が始まる転換の現れなのである」
***引用おわり

これは心理学の「パーソナリティの変容」そのもの。
つまり、自分のなかの「嫌なもの、認めたくないもの」(気づいていない場合も)を
悪者扱いして排除したり、戦いを挑むのではなく、
大切な自分の一つであり、贈り物だと受け入れること。
すると、まるごとの自分を愛するようになり、
ひいては、新しい自分、より高次の自分に「変容する」ということ。
心にも、もともと自発的な「よくなる力」が備わっているのです。

さて、まるごとの自分を愛せるようになった後に起きる、
「変容したパーソナリティ」になると、
自然や、大いなるものとつながるようになります。

「緑が、自然が癒してくれた」と語ってくれた、
公園で出会った人たちを、ふと私は思い出すのです。

・「癒す心、治る力 自発的治癒とはなにか」
アンドルー ワイル・著/上野圭一・訳
角川書店

同じくワイル博士の「ナチュラル・メディスン」、「医食同源」、
「人はなぜ治るのか」もおすすめ。

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