20年ほど前になるだろうか。
電車に乗っている時、見知らぬ人と目が合ったと思ったら、
その人の「女の一代記」や、「男の一代記」を
唐突に語り始めることが続いたことがあった。
私はというと、これが面白かった。
どうも「人とはなんぞや?」という意識があるのだろうか。
さて、数年前に東京でタクシーに乗ったときの話である。
なにかの話の拍子に、運転手さんの「タクシー運転手になった理由」を聴いて、
私は「へぇぇ!」となった。
海外航路の船のコックをしていて、180ヶ国を見てまわった。
もう海の上の生活はいいかなぁと思って、
陸にあがって、小さいながらも自分のフランス料理店を持ってがんばってきた。
あ、外国は知っているけど、日本は知らないな、と気づいて、
タクシーの運転手ならすごく道を覚えられるし、一石二鳥かなと思って、
店は人に譲り、こうしてタクシーの運転手をしています。
…人間ってすごいな。