心で撮る写真

写真家の友人から、写真にまつわる話を聴くと、
たくさんの発見と気づきがある。

友人は写真教室や学校の講師など、レクチャーする仕事もしている。
写真を撮る技術はもちろんだけれども、
それ以上に教えたい、本当のテーマは、
「視点や見方で世界が変わること」、なのだとか。

こんな風に教えるそうだ。
「360度ぐるりの球体に可能性があると思ってください。
被写体をいつもの角度や距離からではなく、
いろんな角度からシャッターを押してみてください。
とくに人物は、
数センチカメラの位地を上下するだけで、表情の印象が変わります。
馴染みの家族でも、はじめて会った人みたいに、
きゃー、誰? かっこいい!となりますよ。
だから、どんどんシャッターを押してみてください、
世界の見方が変わりますから」、と。

そして、プロのプロたる由縁は、
その中から一枚を選ぶ「選球眼」なんだな、と私は思う。
友人はアマチュアの方の写真展のプロデュースもしているのだけれども、
渡された玉石混交の厖大な写真の中から、
光る玉を見つけ出し磨く能力には驚かせられる。
それは、どんな分野の「次元の違う人」がそうだと思うのだけど、
これ素敵!と感動する、心の繊細なセンサーと、
高い技術と客観的な眼を持ち合わせているということ。
うわー、どっちかだけじゃなくて、どっちも高度に、なんだな。
じゃあ、まずどっちで?と友人にたずねたら、
「エモーショナル」と返事が返ってきたのでした。

以下はとてもいい話なので、友人のブログからシェアします。

***ここから転載
『心で撮る写真』

「わたし、写真展がしたいんです。手伝ってください。」と鳴瀧咲子さんから突然お電話をいただいて、半分くらいお断りしようという気持ちでお会いしに行ったんですが、初めて会った鳴瀧さんその笑顔を見たとたん「あ、これは断れないわ。」と思いました。その素敵な笑顔にノックアウトされてしまったんです。

「どんなカメラで撮ったんですか?」「これです!」と出してこられたのは、新しくなさそうなコンパクトカメラ。そして鳴瀧さんはパソコンが使えないので、膨大な枚数の写真は写真屋さんで入れてもらったCDに、家族写真もグルメ写真も法事の写真も、すべて一緒に入っていました。なによりカメラの設定もわからないのでただオートのままシャッターを押しただけ。「これで写真展していいものか?」と私も思いました。でも膨大な写真の中に宝は眠っていました。

今年70歳で車の免許を返納している鳴瀧さんの日常の行動範囲は広くはない。でも歩ける範囲を精一杯歩いて、その中でささやかな非日常を見つけようとしてらっしゃる。川原に咲く菜の花。木立の中のお祭りの屋台。小さなお宮さんで見つけたお百度石etc。ピュアに撮った写真だからこそ、その一瞬に何に感動してシャッターを押そうとしたのかが伝わってきます。鳴瀧さんの笑顔まんまのとても愛らしい写真たち。そして地元の私たちにはキュッと胸をつかまれる景色がたくさん。

写真はたとえ同じカメラで同じ位置から同じものを撮ったとしても撮る人で変わります。おそらくなにを、どこを見てるか、気持ちのレベルでの個人差が写真変えるんです。だから面白い。
私は撮影会や友人たちとの撮影旅行でそのことを教えてもらいました。写真はカメラで撮るけどカメラが撮るのではないんです。

写真展はおかげさまで初日からたくさんの人に見ていただいたようです。「”これで撮ったの!”とコンパクトカメラを見せるとみんなびっくりしてらしたわ。」と昨夜楽しそうに電話で話してらしたので、「明日からは”そのカメラはお手伝いで、ほんとは私の心が撮ったのよ。”って言ってくださいね。」と伝えました。

そんな鳴瀧咲子さんの写真展は6月5日(火)まで。カフェ碧(あお)さんが、なんとも昭和のお家ですがとても落ち着きます。ご来場をお待ちしています。
****転載ここまで

Sugarcublog

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