『大人ははじめは子どもだった。
しかしそれを、
おぼえている大人は、いくらもいない。』
サン・テグジュペリの「星の王子様」の前書きにある、
とても有名なフレーズだ。
この一文をはじめて読んだ時、
私はそこそこ大人になっていたのだけれども、
「自分が子どもだったこと、忘れちゃう人っているの?」と
ひどく不思議に思ったものだった。
記憶喪失じゃあるまいし、
それに、子どもみたいな大人って、
私もだけど、たくさんいるような気がするし
とまあ、釈然としなかったのだった。
「子どもっぽい大人」と、
「子どもだったことを覚えている大人」は、
意味が違うんだと、随分後に分かったのだ。
「子どもだったことを憶えている」とは、
今は、「強くて大きい存在」になって、その自覚もあるけれど、
かつては自分が「か弱い存在」だったことも、シッカと覚えていて、
自分よりか弱い存在に、赤子の手をひねるような真似はしないってこと。
サン・テグジュペリが星の王子様を書いたのは大戦中だ。
か弱い存在って、
年齢や性別や立場だけじゃなくて、
それに、人だけでもないよな…。
「たしかに、いくらもいないかも…。」と、
ドキリとしたのでした。