本気の人

明日は忌野清志郎の命日だ。
私は昔、忌野清志郎のことを良く思っていなかった。
見た目もだけど、
あのフレーズ「愛しあってるかい?」とか、
なんだか軽薄だなぁと思っていた。

ようは、ただの食わず嫌いだったのだけれども、
ある時、映像でステージを見て、
ちゃんと歌を聴いたら、
どうしようもなく言葉が身体に染み入ってきた。
愛とか平和とか言っているけど、
この人は本気なんだ…、と思い知り、
感動を通り越して、
へなへなへなってなったのでした。
映画館でエンドロールが終わっても椅子から立てない、
そんな感じ。

その後に、
普段の清志郎は、穏やかで物静か、
口数も少なく、小さな声で恥ずかしそうに喋る、
とてもシャイな人だと知った。
親交の深い坂本龍一が清志郎にはじめて会ったとき、
あまりにシャイなので、どう接したらいいのか困惑した、というほど。
「きよしちゃん」 「アッコちゃん」と、
互いを呼び合うような古くからの仲良しの矢野顕子も、
いつまでも、静かな少年のような人、というくらい。

インタビューで「…。」だらけなのに、
じゃあ、歌で言ってみてとなると、
ギターを抱え話すように歌う、というエピソードが好きだ。
清志郎の音楽や絵や文筆は、
「言葉そのもの」なのだろう。
それは、とても素敵なことだな、と思う。

矢野顕子の名曲「ひとつだけ」を、
清志郎が歌うと、より言葉が胸に迫ってくる。
そして、清志郎がいなくなってからは、
歌詞の「離れている時でも、ボクのことを忘れないでいてほしいよ」や、
「悲しい気分のときも、ボクのことをすぐに呼び出しておくれよ」が、
あの世から言っているようで、
「本気でそうなんじゃないか?」と、
私は思えるのでした。

ひとつた?け / 矢野顕子・忌野清志郎 – YouTube

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