橋本治が亡くなった。
橋本治の評論やエッセイを、ずーっと心の支えにしてきた私は、
突然の訃報に、もう何がなんだか分からない。
作家で、イラストレーターで、編み物の達人。
頭がよくて、でも肌感覚のようなものにも敏感で、
世界の変化に、「おかしいよ」と真っ先に気が付くカナリアのような人。
これは美しいとか醜いとか、好きだとか嫌いだとか明確に基準があって、
だから、時には世間にプンプン怒るのだけれども、
あのニコニコ顔のように、いつだって機嫌がよくて(だと思う)
とってもチャーミングな人。
橋本治の文章は、読後に人柄の良さや優しさが残るのだけれど、
実際、とても優しい人だったようだ。
「愛のテーマ・序曲 橋本治研究読本」という、
橋本治について、作家仲間やマンガ家、編集者らが語る本があった。
(現在は絶版)
原稿を取りに行ったら、
っちょっと待っててくれるー?と橋本治は自ら茶を入れ菓子を出し、
編集者は炬燵に入って待ってると、
お腹すいてる?と手早くゴハンを作ってくれたりしたそうだ。
私は橋本治の文章だけじゃなく、
こういうところも大好きだった。
「橋本さんにかけてもらった言葉が忘れられない」と、
お悔みのツイートをする人が何人もいて、
なかでも印象的なのは、作家志望の若者たちを家にあげ、
長い時間語り合ったときに橋本治が言った言葉だ。
「もしも目の見えない人が社会に出て不自由を感じるとしたら、
それは社会が間違っているんだよ」
私もだったけど、
生きづらさを感じていた若者たちが、
橋本治にどれほど救われてきたことだろう。
とてもさびしい。