8月6日

姉と私が読書好きになったのは、
親が幼い私たちを町の図書館によく連れて行ってくれたからだろう。
小学生になってからは、好きな本を自分で選んで借りるようになるのだが、
夏が近づくと、町の図書館や学校の図書館に戦争の本のコーナーが出来るので、
私は原爆の本や写真集を借りては読んでいだ。
焦げた死体
皮膚が垂れ下がっている人
ぐにゃりと曲がった建物の鉄骨
人影の石
キノコ雲
今でも不思議なのは、
当時の私は、何かを誰かを探すかのように、
それらの原爆の本や写真集を食い入るように読んでいたこと。
自分や知り合いの痕跡がありはしないかという感覚。
私の親はともに宮城蔵王の出身だし、
もちろん私は、広島と長崎には縁も所縁もない。
中高生になると他に興味が移ったのか、
いよいよ怖ろしく感じるようになったのか、
原爆の本や写真集を借りて読むことはなくなった。

今から何年か前にふと思って、
「原爆の特許を持っている人は誰なのかな?」と、調べてみたのだが、
その人物の名前に不思議と驚きはなかった。
いや、私は全く知らなかったから驚いたんだけど、
どこか「やっぱりそうだった」と、ホッとしたというか、
長い夏休みの宿題がやっと終わったような気がした。
(77年目の夏)

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