「お母さんも、お父さんが藤村俊二に似てると思ってたのよー。」
そう母が言った。
あ、やっぱり? 妻の目から見てもそうだったのねー。
続けて言う。
「えっとね、植木等にも似てた。」
んー、そうねー。そうだったねー。
母は山田昌に似ているので、植木さんと昌さんが夫婦役をしていたドラマ、
「名古屋嫁入り物語」ができちゃうね、と皆で笑ったことがあったっけ。
しかし似ているのは顔のつくりだけだ。(当然だけど)
父はオヒョイでもなければ、スーダラでもなかったのだ。
気の利いたことや洒落たことが言えるわけでもなく、
天真爛漫というわけでもなかったのだった。
父はたまに冗談を言っては、
…えっとね、お父さん(そこに座りなさい的に)と私に言われていた。
冗談には、笑える冗談と笑えない冗談があるんだよ?と言っても、
根が生真面目な父には、どうもそこが分かっていなかった節がある。
エヘ 言われちゃった、という顔をしてフラーと去っていくのだった。
吉本新喜劇が好きで、欠かさず番組を見ていた父だけど、
もしかして笑いの研究をしていたのかしらん。
寅さんの渥美清さんは、寅さんみたいなではなかったとか、
植木さんの素顔はとても生真面目な方だったと言うのは有名な話。
そういう点では、似てなくもない。
しかし、晩年には冗談が言えるようになっただけでも上出来だったよね、と
苦笑いしながら私は思うのでした