シャトルデニム

世の中では、とくに若い人のジーンズ離れがすすんでいると友人から聞いた。
私はなんだか寂しい気がするけれど、そうかもしれないなぁとも思う。

ジーンズが好きだった私でも、最近ジーンズをはくことが減っている。
ジーンズは堅いし、重いし、腰によくなさそうだし、乾くのに時間がかかる。
年齢とともに体型も変わり、ほとんどのジーンズは手放したけれど、
それでも数本のシャトルデニムのジーンズは、現役で残っている。

織るのに時間のかかる、旧式の古いシャトル織り機で織られた伝統的なデニム地。
しじら織のようなその凹凸は、夏は涼しく冬はあたたかい。
その人の体に沿って、縮むところは縮み延びるところは伸びる。
はきこんで体になじんでいく様は、育てるという表現がぴったりだ。

亡き父は70を前にジーンズをはきはじめた。
ラッキーなことに(アンラッキーなことに)私とサイズが同じだったので、
私が持っていたシャトルデニムの中から、父に「お下がり」したのだ。

私は父の棺に、父がはきこんで育てたジーンズを入れた。
そして後で自分のジーンズに脚を通した時に、間違いに気づいたのだ。
…これは、アタシのジーンズではない!
なんと、私の育てたジーンズを父の棺に入れてしまったのだ。
ガーン!!

かくして私のジーンズは旅立ち、父のジーンズが残った。
ご丁寧にも、なにもこんなに大きく書かなくてもと思うくらい、
裏返した前ポケット部には、マジックで書かれた父の名前が。
だいぶ先なんだけど私の棺に入れてもらって、あっちで交換してもらうつもり。

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