亡き父の話。
ある冬の日、あたたかい麺を食べながら言った。
「あたたかい食べ物を食べると俺、
身体があたたかくなってしまうんだよねー
なんでだろ?」
しみじみ不思議そうに言うのだ。
…えーっとね、お父さん。
食べた物は異次元にいってしまうのではなく、
お父さんの胃袋に入るでしょ。
胃袋にあたたかいものが入ると、
お腹の近くにある大きな血管があたたまって、
体中にあたたかい血液が配達されるからですよ。
そう私が言うと
「あ」という顔になった。
時間に追われて食べる食事や、
ながら食べは、
無意識な食べるという行為になりがちだ。
なんという鈍さかとあきれつつも、
父は定年後になって身体の意識に気がついたのだろう。
ゆっくり食べる時間も心の静かさも返上してくれていたのか。
少しねぎらいたい気にもなったことを思いだす。
仕事や家事の合間に、
丁寧に飲み物を淹れて
はじめの数口を飲むことに集中してみる。
身体にあたたかさがまわるのを感じてみよう。
手首、足首、指の先、
気や血の巡りをひとときあじわうことは、
とてもよいリラクゼーションになります。