「それは、目の病気がなかったら命を落としていたかもしれないね…」
ある人に言われたことを思いだした。
私はというと、そうかもしれないと思ったのでした。
実際にその可能性はあったのかもしれない。
毎晩、遅くまでの残業と、休日がほとんどない生活。
仕事中に、右腕が痺れてきたと思ったら動かなくなって、
同時に過呼吸も起こし、緊急搬送されたこともあった。
日本で多くの人が、ハードな勤務をしているなか、
私が離れることができたのは、目の病気のおかげだったかもしれない。
そして仕事以外では、やり出すととまらないところもあった。
たとえば、本を読みだすと止まらなくて朝が来る。
趣味を拡げ、とことんやるまで気がすまない。
自分探しや自分磨きの風潮にあせり、がんばる。
心を占めていたのは、「もっともっと」という思い。
それが健全で自然なものなら、とても素晴らしいと思うのだけれど、
どうも私は、満たされなさや、
自分自身と向き合う時間ができるのを避けていたようだ。
何はともあれ、そんな私のブレーキ約を果たしたのは目の病気。
病気は贈り物とよく言われるけれど、
たしかにそうかもしれないなぁと思うのでした。