「一度、死んでみましたが」 神足裕司・著

いつものようにサピエ(音声図書)をチェックしていたら、
コラムニストの神足裕司(こうたり ゆうじ)さんの新刊がアップされていた。
コータリン?! 一瞬自分の耳を疑ってしまった。

神足さんは三年前に重度くも膜下出血で倒れている。
私は当時の報道を覚えているが、
あまりに深刻な様態だったので、
助かっていないのではないか…という思いが今まで頭の片隅にあった。
生きていたんだ、しかも本まで出てるー。
さっそくダウンロードして聴いてみると、
本当に死んでいてもおかしくなかったことが分かる。

サブタイトルは「スーパー闘病エッセイ!」とある。
脳のダメージにより半身不随の車椅子生活になり、
あの神足さんが言葉を発することができなくなっていた。
(私はあの喋りが好きだったのだ)

しかし神様は神足さんから「書くこと」は奪わなかった。
高次脳機能障害のため、直前に書いた内容を忘れてしまうなか、
自分の書いたその原稿を見直して再び書き出す作業。
かつての何回で饒舌な文体ではなく、
シンプルでやさしい。
家族や友達、故郷への思いがあふれている。
聴きながらすこし泣いてしまった。

「書くことは生きること」。 
ひしひしとそれが伝わってくる。
実際書くことがリハビリになっていて、
故郷の広島に旅行するまでに回復しているところで本は終わる。
最近雑誌の連載が緊急復活したそうだ。
私もがんばろう、そう思った。

*「一度、死んでみましたが」
神足 裕司
2013年/集英社

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