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伝説のフェスから50年/「ベイビー レボリューション」浅井健一・奈良美智/著

米・ウッドストック・ミュージック・フェスティバルの開催から今年の夏で50年。
愛と平和と反戦を訴える若者やヒッピーたちが、全米から40万人集まった、
伝説の野外ロック&フォークフェスティバルだ。
ベトナム戦争、公民権運動、女性解放運動など、激動の60年代、
古い世界を変えたい若者たちの、フラワームーブメントの頂点だった出来事。

1969年当時、私は一歳の赤ん坊だったのだけれども、
自分の生まれた60年代の洋楽がとても好きだ。
そして、背景にあるヒッピーカルチャーやニューエイジムーブメントも大好き。
赤ん坊だったから、当時の世界のことは憶えてはいないのだけれども、
赤ん坊は、世の中に充満した何かを吸って育つのかもしれない。

さて、ミュージシャンの浅井健一さんと、
美術家で、大のロック好きで知られる奈良美智(なら よしとも)さんの
お二人による絵本が出ている。
あのベンジー(浅井さん)と、あの奈良さんが!
浅井さんは、元・ブランキー・ジェット・シティ、現在はシャーベッツで活躍、
奈良さんは、よしもとばななさんの本の表紙の女の子の絵が印象的だ。
文は、浅井さんの作詞した歌の歌詞がそのままで、
絵は奈良さんの描き下ろしなのだそう。

お二人は元々お互いのファンだったそうで、しかも愛知県に縁がある。
いまでも名古屋弁でしゃべる浅井さんは、名古屋の出身で、
奈良さんは、奈良じゃなくて青森出身だけど、愛知県立芸大の卒業なのだ。
奇遇なのは、お二人が以前はじめて対談した時のこと。
名古屋は藤が丘にあるレコード屋で奈良さんがバイトしてた頃、
学生だった浅井さんが通っていたことが判明したのだとか。
音楽は知らないうちに人と人をつなげるね。

「かわいい奇跡を起こしたい」
と、絵本の出版インタビューで語っていた浅井さん。
あの夏、先陣たちが蒔いた種が、いつか奇跡を起こしますように。

「Baby Revolution」
作詞 KENICHI ASAI
作曲 KENICHI ASAI
唄 SHERBETS

青い空の下をはう 3万人のBabyが
裸の生まれたそのまま 3万人のBabyが
野を越え山越え谷を越え 3万人のBabyが
そのうち半分チュッパを 吸ってる人のBabyが
平和と愛のメッセンジャー 突然起こった出来事
大人達はみんなびっくり 3万人のBabyに
ラジオもテレビもトップニュース 報道機関は大パニック
世界中のBaby達 突然集まりはいだす
3万人のBabyが 30万のBabyが ひたすらはいはいして行く
なんという出来事なんだ 危険も省みないで
ひたすらはいはいして行く Baby Revolution

青い空の下をはう 30万のBabyが
中には泣きだすやつもいる 30万のBabyが
ビルの谷間も海の上も何にも思わずはってく
ジャングル奥地も氷河も 元気にはいはいして行く
世界中のBaby達 平和と愛のメッセンジャー
30万のBabyが 300万のBabyが ひたすらはいはいして行く
みんなはその姿を見て 何かを気づかされるのさ
ヘリコプターが中継 Baby Revolution

青い空の下をはう 3千万のBabyが
宗教 条約 法律 何のことだかわからない
まもなく戦争地帯だ おかまいなしに進んでく
兵士も戦車もミサイルも みんな拍子抜けしてるよ
3億人のBabyが みんなの憎しみ消してく
みんなの争い消してく
30億のBabyが ひたすらはいはいして行く
危険も省みないで みんなはその姿を見て
きっと心変わるだろう みんな我に返るだろう
僕達何やってるのか 爆弾落として僕達
悲しみつくって僕達 いったい何やってるのか
何のために殺しあうの 何でこんなことしてるの
30億のBabyが ひたすらはいはいして行く
みんなの憎しみ消してく Baby Revolution
たったひとりの Baby が
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・「ベイビーレボリューション」
浅井健一・文
奈良美智・絵
クレヨンハウス/2019年

人は他人からエネルギーを受け取れる事が科学的に証明されるかも/「聖なる予言」のこと

ドイツ研究チームによると、
植物は、他の植物からエネルギーを受け取っていることが分かった。
緑藻クラミドモナスは、光合成によるエネルギー不足の際、
近隣の植物性セルロースからエネルギーを吸収して成長している事が判明した。
(2016年 学術誌「Nature」に発表)

私はこのニュースをさほど気にとめなかったのだけれども、
これは、とてつもない大発見らしい。
植物同志でエネルギー交換するのが分かったという事は、
いずれ人間と植物の間でも、
また、人間と人間の間、人間と動物の間で、
エネルギー交換していることも判明するだろう、という事なんですって。

つまり、
自然の中にいる時や、動物と過ごすと元気になること、
それに、人と過ごすと元気になるとか疲れてしまうなんてことさえも、
そう遠くない未来に、科学的に証明されるかも、ということなのだ。

おー!それはすごい!
世界的なベストセラーで、冒険小説仕立てのスピリチュアル書、
「聖なる予言」ジェームズ・レッドフィールド・著 山川紘矢+山川亜希子・訳
に書かれている内容が科学的に証明されるの?と思うと私はワクワクする。

「「「聖なる予言」に、エネルギーについて取り上げている内容はと言うと、
人は植物からエネルギーを受け取っていること、
人は他人とエネルギーを与え合えもするし、奪い合いもすること、
(当ブログ「コントロールドラマ」をご参照下さい)
そして、人は自然や宇宙からエネルギーを受け取ることができることも。
わー、証明されるのいまから楽しみだな~。

「聖なる予言」は1994年(アメリカはもっと前)の出版だから、
もう、25年前の本になる。
私は当時、「聖なる予言」の内容に沿ったレッスンガイドブックである、
「聖なる予言 実践ガイド」(角川書店)まで買ったのに、
私の理解力も意識の段階も追いついていなかったのか、チンプンカンプン…。
というか、
読もうと手に取るも、なぜか読み進めることさえできなかったのだ。
「聖なる予言」は、その人のベストタイミングでしか出会えない本として有名で、
私は5年前にようやくその時が来たのだろう、
読むのは盲人用音声図書になってしまったけど、20年越しの感動が。
科学も私もようやく「聖なる予言」に追いついた、ということなのでした。
(今こそ読むべき本)

・「聖なる予言」
ジェームズ・レッドフィールド・著
山川紘矢 山川亜希子・訳
角川文庫

・「聖なる予言 実践ガイド」
ジェームズ・レッドフィールド
キャロル・アドリエンヌ
角川書店(現在は絶版)

「センス・オブ・ワンダー」レイチェル・カーソン著

大自然の中へ飛び込んだ人は、
その後の人生が変わってしまうことがある。
サーファーやダイバーやカヌーイストだったり、
登山者やハイカーやキャンパーが、
大自然のなかにいる時に抱く想いが、人を変容させるのだろう。

自然は時に荒々しい。
海は暴風は吹き大波は立つし、
山なら激流に切り立った崖もある。
テントから出ると降ってくるような満点の星、
はてしない荒野、
潜ると濃くなっていくグランブルーの前では、
ただただ圧倒されて、私は身ぶるいした。

この身ぶるいするような感覚は、
「センス・オブ・ワンダー」と呼ばれる、自然への畏敬の念だ。
驚きに満ちて、神秘的で、
どこか清々しくて、ピシっと背筋が伸びる感じ。

この、大自然への畏敬の念が、
人の心身の健康を一変させることが、最近の脳科学の研究で分かってきた。
トラウマや、人工的な刺激過多等による脳のストレスを取り除き、
本来のイキイキとした五感を取り戻すというのだ。

そういえば、私は若い頃、
一時的に離人症のような症状になったことがあった。
膜越しに世界を見ているようで、何を聞いても触っても現実感がない。
沖縄で言うところの「マブイが落ちた」だ。マブイとは、「たましい」のことね。
そんな私を再生してくれたのは、海であり山だったと思う。
白黒テレビがカラーになるように、
私の世界や五感はイキイキとしたものに変わっていった。
今は街暮らしなのだけれど、
公園の木々のざわめきや、
遊歩道の花壇の花の香り、
聴こえてくる小鳥のさえずりから、自然を感じては楽しんでいる。

さて。前書きが長くなった。
名著「沈黙の春」のカーソン女史の遺作である本書は、
本当に美しい贈り物のような一冊だ。
亡くなった姪の子である、幼いロジャーとともに森や海岸を散策するカーソンの、
自然の描写が詩のように美しい。
自然を前にしたロジャーの驚いたり喜んだりする様子は、
私たちが忘れている「センス・オブ・ワンダー」そのものだ。
「本当に美しいものは目に見えない」と、星の王子様は言ったけれど、
本当に美しいものは、美しさをみつける心だと、カーソンは教えてくれる。

・「センス・オブ・ワンダー」
レイチェル・カーソン著/新潮社

「イルカを追って 野生イルカとの交流記」ホラス・ドブス著

私がスキューバダイビングを始めたきっかけはイルカだった。
仏・映画「グラン・ブルー」を観たことと、
ドッブス博士の「イルカを追って 野生イルカとの交流記」を読んで、
イルカと一緒に泳ぎたいと思ったのだ。カナヅチなのに。

80年代に、何度目かのイルカブームがあって、
日本でも、イルカのスピリチュアル的な要素がクローズアップされた。
イルカセラピーとかアクアセラピーと呼ばれる、
心身に障害を持つ人への、イルカのヒーリング能力である。

実際に、海でドルフィンスイムを体験した方から聞いたのだが、
イルカは、心の傷ついた人や、身体に障害を持つ人に先に近づいていたそうだ。
そして、イルカみたいに潜ったり泳いでいる人のところへ行って一緒に遊び、
ふいに、じゃバイバーイと去っていったという。
イルカと過ごした後は、幸福感に満たされて、
皆の顔が笑顔で輝いていたそうだ。

なぜ、心の傷ついた人や身体の障害を持つ人が分かるのか?
イルカの発する超音波のせいなのか、
群れの仲間を気遣うイルカの習性によるものなのか、
いくつか説はあるけれど、実はよく分かっていない。

この、よく分かっていない、
違う星から来たような謎の生物であるイルカと、
人間との交流を記録したのが本書、
「イルカを追って 野生イルカとの交流記」だ。
英・マン島に現れた野生のイルカ「ドナルド」と、
人々との遭遇と交流を、ドッブス博士は淡々と描く。
ドナルドを快く思っていない住人もいて、
危ない目に遭い、無邪気だったドナルドが少しナーバスになるのもリアルだ。
それでも、一貫して人間を信頼し愛するドナルド…。

昔は違う出版社の単行本だったが、
現在は集英社で文庫化されているようだ。
何回も読み返したくらい好きな本だったけれど、
結末がどうだったのか、流石に何十年も前なので思い出せない。
想いだすのは、当時の私はひどく孤独だったこと、
いや、実際に孤立していたわけでもなくて、
孤独感を持っていた、ということだ。
映画「グラン・ブルー」のジャックのように、
イルカなら分かってくれるんじゃないか、とさえ思っていた。

さて、私がイルカと泳ぐことができたかどうかだが、
失明してダイビングをやめたこともあって、
ついに実現できなかった。
ただ、小型艇の乗船中に、
船と同じスピードで泳ぎ、ジャンプするイルカの群れに遭遇したことはあった。
間近で自分の目で目撃できたのだ。子どもみたいに皆が大はしゃぎ。
もうね、最高にハッピーだった!

・「イルカを追って 野生イルカとの交流記」
ホラス・ドブス著/集英社文庫

橋本 治さん

橋本治が亡くなった。
橋本治の評論やエッセイを、ずーっと心の支えにしてきた私は、
突然の訃報に、もう何がなんだか分からない。

作家で、イラストレーターで、編み物の達人。
頭がよくて、でも肌感覚のようなものにも敏感で、
世界の変化に、「おかしいよ」と真っ先に気が付くカナリアのような人。
これは美しいとか醜いとか、好きだとか嫌いだとか明確に基準があって、
だから、時には世間にプンプン怒るのだけれども、
あのニコニコ顔のように、いつだって機嫌がよくて(だと思う)
とってもチャーミングな人。

橋本治の文章は、読後に人柄の良さや優しさが残るのだけれど、
実際、とても優しい人だったようだ。
「愛のテーマ・序曲 橋本治研究読本」という、
橋本治について、作家仲間やマンガ家、編集者らが語る本があった。
(現在は絶版)
原稿を取りに行ったら、
っちょっと待っててくれるー?と橋本治は自ら茶を入れ菓子を出し、
編集者は炬燵に入って待ってると、
お腹すいてる?と手早くゴハンを作ってくれたりしたそうだ。
私は橋本治の文章だけじゃなく、
こういうところも大好きだった。

「橋本さんにかけてもらった言葉が忘れられない」と、
お悔みのツイートをする人が何人もいて、
なかでも印象的なのは、作家志望の若者たちを家にあげ、
長い時間語り合ったときに橋本治が言った言葉だ。
「もしも目の見えない人が社会に出て不自由を感じるとしたら、
それは社会が間違っているんだよ」

私もだったけど、
生きづらさを感じていた若者たちが、
橋本治にどれほど救われてきたことだろう。
とてもさびしい。

84歳の画家がデザイン、モデル最高齢は90代 ど派手シャツで人生楽しもう/yahoo!ニュースより

私の友人の佐藤加奈さんが、画家の岡田嘉夫さんとともに、
共著の写真集「エエマイシャツを着た男たち」のインタビューを受け、
神戸新聞に掲載され、yahoo!ニュースになりました。
(以下は、yahoo!ニュースより全文転載)

****ここから転載
1/25(金) 15:00配信

神戸新聞NEXT

84歳の画家がデザイン、モデル最高齢は90代 ど派手シャツで人生楽しもう
「年だからって地味にする必要はない」と話す岡田嘉夫さん(右)とカメラマンの佐藤加奈さん=神戸市兵庫区
 熟年男性よ、街へ出よう-。神戸市在住の画家、岡田嘉夫さん(84)が写真集「エエマイシャツを着た男たち」を出版した。「エエマイ-」とは「良い(ええ)私の(マイ)-」の意味。岡田さんがデザインしたど派手なシャツを着た、中高年を中心とする一般男性約100人がモデルを務めた。高齢男性は女性に比べ引きこもりがちになるとされるが、岡田さんは「1枚のシャツが人の性格を変える」と、おしゃれの可能性を発信する。(貝原加奈)

 岡田さんは神戸市中央区生まれ。グラフィックデザイナーとして活動後、30歳で東京へ。画家として幅広く活躍し、作家の田辺聖子さんや橋本治さんらの文芸書の挿絵などを多数手掛けた。80歳で神戸に戻り、現在は同市兵庫区のケアハウスで妻と暮らしながら創作活動を続ける。

 帰郷後、「海も山も街も近く、色が鮮やかに見える」と神戸の魅力を再発見した岡田さん。街歩きが楽しくなったが、かかりつけ医から「引きこもり老人が増えている」と聞き、「どうやって外へ連れ出そうか」と考え始めたという。行き着いた答えが「おしゃれ」だった。

 「既成概念にとらわれない着こなしの面白さを伝えたい」と3年前、写真集の出版を企画。付き合いのあったシャツテーラーの浦上雅男さん(65)=神戸市中央区=やカメラマンの佐藤加奈さん(56)=兵庫県三木市=らの協力を得て、2016年3月に撮影を始めた。

 モデルは、岡田さんの趣旨に賛同した神戸や京都、東京などに住む一般男性96人。中高年を中心に、最高齢は90代まで幅広い世代が参加した。肩書も、孫好きのおじいちゃんや地域の世話役、寺の住職などさまざまだ。

 衣装はいずれも、インパクトのあるカラフルなシャツ。動物柄や和柄など何種類もの生地を岡田さんが持参し、モデルに合わせて組み合わせをデザインし、浦上さんがシャツに仕立てた。最初は普段の自分との違いに戸惑っていた人も「写真に写った自分に、まんざらでもない様子だった」とカメラマンの佐藤さん。岡田さんも青や黄緑、オレンジ色や英字などを組み合わせたシャツで表紙を飾る。

 「髪を整えてオーデコロンを振れば、自然と歩幅も広くなる」と岡田さん。「残りの人生楽しまないと、もったいないじゃない」と笑う。

 写真集は134ページ、A5判。出版ワークス刊、1404円(税込み)。

***転載おわり

84歳の画家がデザイン、モデル最高齢は90代 ど派手シャツで人生楽しもう(神戸新聞NEXT) – Yahoo!ニュース

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190125-00000015-kobenext-l28

「君は弥生人か縄文人か 梅原日本学講義」梅原猛・中上健次/著

梅原 猛さんが亡くなった。
私がうんと若かった頃、旅のお供の本は、
梅原先生の「君は弥生人か縄文人か」と、
「日本の深層 縄文・蝦夷文化を探る」だった。
旅の行き先は、東北。沖縄。そして紀州。
縄文の名残を探しに、である。

「君は弥生人か縄文人か」はとにかく大好きで、
私はすっかり縄文人と縄文文化に魅せられてしまったのだ。
この本は、梅原先生と故・中上健次さんの対談をまとめたもので、
二人の対談中の写真の表情が本当に楽しそうだったのだ。
縄文を語ると、なにやら元気になるのではと、私は直感したのだが、
読み終えると、本当に元気になっていたのだった。

縄文時代は弥生時代よりも劣っていた、と教えられてきたが、
果たして本当だろうか?
文明や文化の度合いは、
高層ビルがいっぱい建っているとか、
領地がたくさんあるとか、
武器をいっぱい持っているとかじゃなくて、
自然を大事にするとか、
必要以上は欲張って持たないとか、
「見えない力」を感じ取る感受性なのではないか?
この対談本の初版は80年代、
日本はイケイケドンドンのバブル期だった。
だからこそ、この本のタイトルの、
「君は弥生人か縄文人か」は、とても大きな問いかけだった。

私は、自分のルーツが縄文人だったらいいなあ、
いや、先進的で高度な縄文分化が最盛期を迎えた地、
かつて日本分化の中心だった東北の出身なわけで、
だから、自分は縄文系に違いないわ~、なんて思ったのだけれど、
この本が言いたいのは、君のルーツがどっちか?じゃない。
そもそも、日本人は弥生と縄文、他にも様々な人種が混血しているのだ。

梅原先生は言う。
弥生人の技術に、縄文人の魂を持ち合わせよ、と。
ルーツが縄文人であろうとなかろうと、
「縄文人的」に生きることはできるはずなのだ。

・「君は弥生人か縄文人か 梅原日本学講義」
梅原 猛・中上健次/集英社文庫

・「日本の深層 縄文・蝦夷文化を探る」
梅原 猛・著/集英社文庫

ステキな服を着て街へ出よう!/「エエマイシャツを着た男たち」佐藤加奈・著

定年退職した父は戸惑っていた。
仕事人間だった父は、職場の他に行く所も思いつかなくて、
スーツの他に、毎日どんな服を着たらいいのかサッパリ分からなかった。
そこで、私は父に服をいくつかプレゼントして、
何通りかの決まったコーディネイトをしてあげた。
すると、父のお出かけがグーンと増えたのだ。

赤や黄のチェック柄のシャツを着たり、
高オンスのデニムやチノを履くようになった父は、
「かっこいいですね」とか、「似会ってます」と、
また見ず知らずの人に言われたんだ、と嬉しそうだった。
服で、見た目も気持ちも行動も変わるんだなと、私は驚いたのでした。

さて、前置きが長くなったけれど、
私の長年の友人でもある、写真家・佐藤加奈さんの写真集が出ました。

世界に一枚きりの派手なシャツ着た、
フツーのオジサンや、フツーじゃないオジサンたち約100名のポートレート集。
人物をよりカッコよく撮る、写真家の佐藤さんと、
人物をよりカッコよくスタイリングする、スタイリストの谷山伸子さん。
長いつきあいの二人のタッグにかかれば、
クールに! ちょいワルに! カッコよく大変身!
港街・神戸の魅力もたっぷり!

楽しくて見飽きない!と評判の理由は、
服が、スタイリングが、ロケーションが、
そして、自信のようなものが人を変える瞬間を切り取っているから。

*内容(ookデータベースより)
60年の東京生活後、神戸へ帰った画家・岡田が見たものは、
家から出ようとしないじいさんたち。
「こんな素敵な街でなんてこと!世界に一枚きりの派手なシャツ着て街へ出よう!」
これに賛同したシャツテイラー・浦上と中高年、その予備軍たちで作った本。
“歳は楽しく遊びながら取ろう!”

・『エエマイシャツを着た男たち』
岡田嘉夫(シャツデザイン) 佐藤加奈(フォト)・著
出版ワークス/2018.11.27

星の王子様とバオバブ

「星の王子様 バオバブの苗木」というタイアップ商品が
抗議が殺到し、販売中止になったそうだ。

それは、そうだよなぁと私は思ったのだった。

もし、企画の段階で、
星の王子様を読んだことのある子どもに相談してたら、
「そんなのダメだよ!」と、即答するだろうにね。
とっくの昔に大人になった私だったら、
うっかりと「いいんじゃない?」と言いかけて、
いや、まてよ?と少し考えてから、
「それはちょっと…」と、言葉を濁すかしら。
物語の中で、王子様は自分の星のバオバブの芽を引っこ抜いて、
バオバブが育ち増えるのを食い止めようとしていたからだ。

うっかりした大人達が、バオバブの成長をほったらかしにしていたので、
ある星は取り返しのつかないことになった。
星の大きさくらい巨大化したバオバブは、
その太い根が、星の裏側の反対側まで突き破って、
しまいに星は割れてしまったのだ。

もちろん実際のバオバブは、そんなことはないのだけれど、
作者のサン・テグジュペリが、
星の王子様のバオバブを、ファシズムの象徴として描いたのは明らかなこと。
物語に出てくる、王様や実業家や呑み助や点灯夫みたいな、
うっかりした大人達が気がついた時には、ファシズムが世界を席巻していた。

サン・テグジュペリは、ナチスドイツと戦う飛行士でもあった。
偵察飛行に出たまま、星の王子様のように忽然と姿を消してしまう。
1998年に、フランスのマルセイユ沖の海底から
搭乗していた機体の残骸と、
自分と妻の名が刻まれた、愛用していた銀のブレスレットが発見されたっけ。

だから、王子様とバオバブの抱き合わせ商品は、
いかに大人はうっかりしているか、を再確認させてくれたのだけれども、
実に、うっかりとした大人である私は、
なんかね、冷や汗が出る思いなのでした。

*星の王子様
サン・テグジュペリ 著/岩波少年文庫

「シンデレラボーイ シンデレラガール」橋本治・著

もし若い頃に、橋本治の本を読んでいなかったら?
どうにかこうにか、今まで私が持ちこたえてこれたのは、
橋本治のおかげ、と言っても言い過ぎじゃない。
名著「シンデレラボーイ シンデレラガール」で、
自分をやっと分かってくれる人がいたと、
二十歳そこそこだった私はボロボロ泣いて、
しばらくは橋本治の評論ばかり読んでいた。

世の中や物事は、実はこういう仕組みで、
キミのモヤモヤの本質は、こういうことじゃない?
橋本治は、とても難しいことを、
易しい言葉で手トリ足トリ説明してくれるのだけれど、
滋養のある食べ物は、よーく噛まないといけないように、
橋本治の本は、読むのに何かしらの筋力が要る。

道に例えて言えば、
クネクネ道だったり、
ちょっと脇道に入ってみたり、
一旦また路を遡ったりする。
うわ、迷子になった…と心細くなっていたら、
スパーンと目の前が開けるドンデン返しだ。
心と頭のサーキットトレーニングのようで、
読むのにフウフウ、
ついていくのがやっとな感じ。

でも、自分で考えたり答えが出るって、
こういう面倒に思える道のりで、
プロセスだって大切なんだ、と気づかされる。

だから、橋本治は一貫して安易に答えは教えてくれない。
近著「負けない力」でも同じこと言ってる。
いいかい?
自分への問いが生まれたら、こっちのものさ。
キニの答えはキミの中にあるんだからね。
そんな橋本治のいいつけを、
忘れた頃に思い出しては、自問自答していたけれど、
久しぶりに「シンデレラボーイ シンデレラガール」を
視覚障害者音声図書で読み返してみると、
ぎゃあ! すんごいこと書いてあったんや!
カウンセリングの内容じゃないんだけど、
神髄としか思えないことが書いてあって、
橋本治も、私のカウンセリングの恩師だったのねと思ったのでした。
(いま読んでる「負けない力」も、すんごいこと書いてある)

「シンデレラボーイ シンデレラガール」
橋本治・著/河出文庫(現在は絶版)

「負けない力」
橋本治・著/大和書房