「イルカを追って 野生イルカとの交流記」ホラス・ドブス著

私がスキューバダイビングを始めたきっかけはイルカだった。
仏・映画「グラン・ブルー」を観たことと、
ドッブス博士の「イルカを追って 野生イルカとの交流記」を読んで、
イルカと一緒に泳ぎたいと思ったのだ。カナヅチなのに。

80年代に、何度目かのイルカブームがあって、
日本でも、イルカのスピリチュアル的な要素がクローズアップされた。
イルカセラピーとかアクアセラピーと呼ばれる、
心身に障害を持つ人への、イルカのヒーリング能力である。

実際に、海でドルフィンスイムを体験した方から聞いたのだが、
イルカは、心の傷ついた人や、身体に障害を持つ人に先に近づいていたそうだ。
そして、イルカみたいに潜ったり泳いでいる人のところへ行って一緒に遊び、
ふいに、じゃバイバーイと去っていったという。
イルカと過ごした後は、幸福感に満たされて、
皆の顔が笑顔で輝いていたそうだ。

なぜ、心の傷ついた人や身体の障害を持つ人が分かるのか?
イルカの発する超音波のせいなのか、
群れの仲間を気遣うイルカの習性によるものなのか、
いくつか説はあるけれど、実はよく分かっていない。

この、よく分かっていない、
違う星から来たような謎の生物であるイルカと、
人間との交流を記録したのが本書、
「イルカを追って 野生イルカとの交流記」だ。
英・マン島に現れた野生のイルカ「ドナルド」と、
人々との遭遇と交流を、ドッブス博士は淡々と描く。
ドナルドを快く思っていない住人もいて、
危ない目に遭い、無邪気だったドナルドが少しナーバスになるのもリアルだ。
それでも、一貫して人間を信頼し愛するドナルド…。

昔は違う出版社の単行本だったが、
現在は集英社で文庫化されているようだ。
何回も読み返したくらい好きな本だったけれど、
結末がどうだったのか、流石に何十年も前なので思い出せない。
想いだすのは、当時の私はひどく孤独だったこと、
いや、実際に孤立していたわけでもなくて、
孤独感を持っていた、ということだ。
映画「グラン・ブルー」のジャックのように、
イルカなら分かってくれるんじゃないか、とさえ思っていた。

さて、私がイルカと泳ぐことができたかどうかだが、
失明してダイビングをやめたこともあって、
ついに実現できなかった。
ただ、小型艇の乗船中に、
船と同じスピードで泳ぎ、ジャンプするイルカの群れに遭遇したことはあった。
間近で自分の目で目撃できたのだ。子どもみたいに皆が大はしゃぎ。
もうね、最高にハッピーだった!

・「イルカを追って 野生イルカとの交流記」
ホラス・ドブス著/集英社文庫

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