「くまのプーさん」と黒柳さん

サピエ(視覚障害者用の音声図書ネットサービス)で
「くまのプーさん」を聴いていたときのこと。

私はディズニー版よりも断然、
A・A・ミルン・作 石井桃子さん訳のオリジナル・プーが大好きなのです。
哲学のようであり、老子のようであり、楽しいながらも深いお話と、
そして石井桃子さんの美しい日本語訳が堪能できるのです。

さて、久しぶりのプーさん、音読で聴くのは初めてです。
聴き始めて、音読されている方がやたらと上手くて
あまりにチャーミングなことに心を奪われてしまいました。
サピエは音読ボランティアさんが録音してくださっていて、
みなさん上手なのですよ。
そのなかでも、わー凄いなあーと。
お話にぐいぐい引きこまれて、わかっているのに大笑いしたりハラハラしたり。
この声、あの人に似ている、あの人に似ていると思いながら、
はじめてプーさんを読む子どものように楽しんでいたら最後に、
「昭和42年録音 朗読は黒柳徹子でございました」と流れたではないですか!
えーーーーっ!まさか御本人とは!

ネットで調べましたら、60年前から音訳の奉仕活動をされていたのですね。
当時の録音の裏話を黒柳さんが語っていらっしゃるページがありました。
以下は転載になります。

***ここから転載
点字を扱うには教育を受けないとできないので、
まずは点字の通信教育を受けることにした黒柳さん。
ほぼ点字ができる段階になったときに、
日本で初めて高田の馬場に点字図書館を作った本間一夫館長から連絡があった。
「『聞けばあなたは女優さんだそうだけど、
これからはテープの時代になると思うので、点字ではなくて、
あなたの場合はテープで録音してもらえないか』
と言われたんです。
もちろん、当時はNHKや特別なところにしかテープレコーダーがなかったんですが、
本間先生は、その機械を購入なさったので、先生のおうちに行って
ガラス戸を閉めて録音することになりました。
夏の暑い日にね、外の音を遮るために雨戸も閉め切って、
毛布を被って、その中に電気スタンドと手持ちのマイクを引き込んで、
大きなテープレコーダーに、『クマのプーさん』とか、『星の王子さま』など、
子供用の本がなかったので、そういうのを録音したんですね。
でも、なんせ、すごく暑くてね、
毛布から出ると、あ?涼しい!って言うくらい(笑)。
当時はテープが高価で編集などできないので、
間違えると最初から全部やり直しでね。それが最初でしたね」
「後年、何かの催しのとき、目の見えない男子の高校生がそばに来て。
『小さいとき、“クマのプーさん”を聞きました。うれしかったです』
と言ってくれました。私もうれしくて涙が出そうでした。
ですから『窓ぎわのトットちゃん』がベストセラーになったとき、
最初にしたのは、日本中の200カ所くらいの点字図書館に
自分で読んだテープを寄贈したのです」
***転載ここまで

毎日のように利用している音声図書ネットサービス、
視力を失っても本をたのしむことができるのも、
全国の音声録音ボランティアさんのおかげなのです。
・「くまのプーさん」
Э・Э・ミルン 作
石井桃子 訳
岩波少年文庫

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