かつて出会った私の人生の先輩はこう言った。
いろんな経験をしたらいい。
とくに、失敗や上手くいかなかった経験は、後で宝物になるから、と。
私は社会に出たばかりの頃だった。
にもかかわらず、というかだからこそなのか、
傲慢としか言いようがない万能感と、
その反動で、卑屈としか言いようがない無能感に悩んでいた。
それを見かねて言ってくれたのだろうけれど、当時はよく分からなかった。
(というか反発すらした)
しかし、若いうちに一見ネガティブに思える経験、
失敗だったり、上手くいかなかったり、
悩んだりもがいたり、理由のない疎外感で孤独だったことは、
今では私の宝物になっているのは確かなことだ。
さて、今回ご紹介するのは、
悩み多き若かった私に、「ホラ読んでごらんよ」と手渡したい本である。
「脳科学とやらではさ、それは言えてるらしいよ」と付け加えよう。
著者は脳の研究者である
昔から「失敗は成功の母」なんて言うけれど、
脳の研究からも同じことが言えるそうだ。
そして、失敗や孤独が、いかに脳の成熟に大切であるかも書かれている。
著者の言う英雄とは何なのか?
いま悩み傷つき孤独だとしたら、
それは、英雄が荒野を歩みはじめている証だと著者は言う。
若い人に読んでほしい一冊。
そして、かつて若者だった人に。
*「英雄の書」
黒川 伊保子・著/ポプラ社