音と記憶

春の終わりの頃だったと思うが、
長年の友達が遊びに来た時のことだ。

午前中のお茶の時間に、不意に外から大きな音がした。
我が家の近くには小さな町工場がある。
そこから金属を加工するのか、打ち叩く音が数回したのだ。
私はお茶のゆったりした時間を少し邪魔されたような気がして
うるさいなとも感じたのだが、
しかし友達は「あら!素敵!」と声をあげたのだ。
え?どこがー素敵なのー?
「あの家お昼ごはんかなー?、船が出るよーって感じだねー!」

友達は日本海の港町に生まれて、
中華街のある港街で育っている。
亡き父上は海外航路の船員さんだった。
幼い頃には、父上が日本に一時帰港する度に
各地の港に面会に行っている。
私はそれを思い出した。
船の出航のドラの音みたいに聴こえたのね。
そう分かった途端に、
大きな船が何色もの紙テープを纏っている姿や、
しばしの別れに手を振る人々が浮かんできた。
ああ、これは素敵だねえ。

でも、ごはんだよーのドラの音は?
いくら中華街でもしないよねえ?
お腹すいてた?

音と記憶」への2件のフィードバック

  1. 彼女は大食いだから、全て食べること中心に考える人みたいね(笑)

    ともちゃんはロマンティックや〜
    素敵な船出のシーンが浮かんでくるなんて♡

  2. やっぱり(笑)
    私が船出を思い浮かべていた時
    あちらは北京ダックが浮かんでいたのかも。

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